[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大への警戒感が和ぐ一方、ハイテク株には利益確定の売りが出て、株価指数はまちまちな動きとなりました。
週間変動率 NYダウ:+1.08%, NASAQ:-0.05%, S&P500:+0.85%
一方、中長期的には、エネルギー・コスト、生産・供給コスト上昇によるインフレ加速懸念と、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、サプライチェーン混乱などによる世界経済の減速懸念もあります。このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東、ウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.23ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが22.8に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.8との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.23ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが16.6程度になるか、又は、日経平均が34650円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は5860円ほど割安です。
ファンダメンタルで見れば、日本市場は5860円分魅力に欠ける状態であるとも言えます。
先週と比べて、割安幅は拡大ました。米国の長期金利の上昇が主な要因です。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大と一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+1.8%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。今週は、NYDowが200日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.1%となりました。3ヶ月前に比べて0.1ポイント悪化しています。また、利益伸び率は+34.8%で3ヶ月前に比べて1.6ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利が上昇し、日米間の金利差は1.43から1.45と拡大して、ドル円は114円から115円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.41%下落しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率予測が公開されて、日本が+1.8%で、米国は+4.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.1ポイント劣ります。
⑤ 12月第4週は売り越しで、12月第5週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①と③が強気材料で、⑤が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に6.7ポイント(日経平均に勘算すると1930円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に4.5ポイント(日経平均に勘算する1300円程度)割安です。
週間では、NYダウに対する日本市場の弱さが増しました。外国人売りが続き、日本市場では米国市場ほどボラティリティーの低下がなかった為です。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は+0.1%となり先週と比較してプラスに転換しました。200日移動平均線との乖離率は-0.1%で、マイナス幅は縮小しました。2つの要素がマイナスですので、中期トレンドには、"黄信号"が点灯しています。
日経平均は、25日線と9日線の上にあります。短期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、200日線・25日線・9日線の上にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQは、200日線・25日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。
短期的には”黄信号”で、中期的にも”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東やウクライナ、東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては米国政府による大規模の経済対策があげられます。また、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債と12兆円までのETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府による経済対策があります。さらに、EUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の継続などが揚げられます。ただ、ECBとFRBは債券購入の減額を決め、利上げ時期を探っています。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期ももみあいです。日本市場は中期もみあいで、短期は上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は114円台から116台が想定されます。
今週は、FOMC議事録と米雇用統計が発表され、FRBによる最初の利上げ時期についてさらなる手がかりが得られるでしょう。さらに、投資家は世界各国のPMI調査や、2月からの原油の生産計画に関するガイダンスを提供すると予想されるOPEC+の会合を待っています。その他、米国とドイツの製造業受注、英国の住宅価格、ユーロ圏のインフレ率、日本の消費者信頼感指数などが注目されます。
今週は、三角持ち合いを上下どちらかに抜ける前の、踊り場での一進一退の動きが続きそうです。
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