[市況]
29日のNYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。30日の日経平均先物は、前日比80円安で寄り付き、午前中は90円安から60円安の範囲でもみ合う動きでした。午後は120円安と40円安の範囲で上下し、最終的に60円安で取引を終わりました。日経平均は43円安で引け、出来高は17.62億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、100万株の売り越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅が拡大しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利な状況です。
29日の米国市場は、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が予想上となり、景気の回復持続に対する期待から出遅れ銘柄を中心に買いが優勢になりました。原油相場の上昇でエネルギー株も買われました。ただ、欧州情勢の不透明感やアメリカン航空が連邦破産法11条を申請したことが相場の重荷になりました。
30日の日本市場では、朝方に伝わったユーロ圏財務相会合の結果は欧州債務問題への懸念を後退させる内容ではないとの見方が多く、手控え気分が強まりました。午後は上海株などアジア市場の軟調さも加わり、日経平均は下げ幅を100円強に広げる場面がありました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。短期トレンドは黄信号が点灯しています。総合乖離率は-15.0%でマイナス幅が拡がりました。200日線との乖離率は-10.3%でマイナス幅は拡がりました。日経平均は一目均衡表の雲の下に在ります。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドは赤信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。
NYDowは200日線、25日線の下に在りますが、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは200日線、25日線の下に在りますが、9日線の上に在ります。一目均衡表では雲の中に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドは黄信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が4.4ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は変わりませんでした。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差(3.5ポイント)と金利差、予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 3.33ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災復興の日本経済への影響」、「世界の景気と金・穀物・原油価格の動き」、「米国の景気、雇用状況、住宅市況と追加金融緩和の行方」、「欧州の債務問題による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。米国の7-9月期のGDPは年率で2.0%増と速報値の2.5%から下方修正されました。7-9月期の主要企業の決算発表は好決算が勝ったようです。経済指標では、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、10月の景気先行指標総合指数、10月の耐久財受注、10月の鉱工業生産、10月の小売売上高、11月のNY連銀製造業景気指数、11月のミシガン大学消費者態度指数、9月の個人消費支出、などは市場予想を上回りましたが、10月のシカゴ連銀全米活動指数、11月のフィラデルフィア連銀指数、10月のISM非製造業景況感指数、10月のISM製造業景況感指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数は予想以下となりました。10月の雇用統計は、雇用者数が8万人増となり、市場予想の9万5000人増を下回りましたが、失業率は9.0と前月の9.1%から、やや改善しました。一方、住宅関連では10月の中古住宅販売件数、10月の住宅着工件数、11月の住宅市場指数は予想以上となりました。10月の新築住宅販売件数も予想以下ながら2ヶ月連続増加となりました。9月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で0.6%低下しました。市場予想の変わらずより弱い結果でした。7月に入り景気指標は改善傾向だったものの、8-9月は陰りが出ていました。10月に入り過度の景気後退懸念は無くなりつつあります。ただ、雇用と住宅関連の回復は鈍く金融緩和継続の主な原因となっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインなど欧州各国の財政赤字による国債の金利上昇が金融システム不安再燃の懸念を生んでいます。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBは景気認識を引き下げ、短期金利を2013年半ばまでは超低金利で維持することを表明しました。これは長期的な円高要因です。一方、中国を初めとする新興国の利上げは景気減速で一服していますが、逆に景気減速懸念が有ります。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は11月24日 0.5117%→ 11月25日 0.5181% → 11月28日 0.5231%となり上昇は継続しています。2010年の欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を超えましたので、金融システム危機が再燃してもおかしくない状態が続いています。ここ2年のMAXは昨年6月17日の0.539%です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.1、PBRが0.93、ROEが6.6%となっています。PBRが1.0以下ですので長期的には買い場と思われます。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの上昇のも関わらず下げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は;-0.1%となり、日経平均は10円の割安で、割安に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-90円 ~ +130円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べ強い動きに転換していましたが、今日は弱い動きに戻りました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は0.93に拡大し、ドル円はドル高円安方向です。日米金利差は米国金利の下降で縮小傾向となり、円高圧力となるはずが、逆に円安ぎみとなっています。
テクニカルには、米国市場は、中期もみ合いで、短期ももみ合いです。一方、日経平均は中期下降トレンドで、短期はもみ合いです。
ファンダメンタル面では、EUの政府債務問題が欧米の銀行の不良債権となり金融危機が再来するか否か、世界の景気後退が米国の主要企業の業績に影響するか否かが引き続き、今後のテーマとなりそうです。LIBOR銀行間金利は上昇が続いており、銀行間の警戒感が後退する気配は見えません。欧州財政問題が金融危機に発展する要警戒状態が続いています。今後もLIBOR金利の動きが注目されます。また、米国の経済指標は良いものも見られますが、雇用の回復は鈍く、世界景気の減速懸念も払拭出来ていません。このような、相場環境の中、今夜の米国市場は11月のADP雇用統計、11月のシカゴ購買部協会景気指数が注目されそうです。
今日の日経平均はユーロ圏財務相会合の結果は思ったほどではなく下落しましたが、ボリンジャーバンド-1σが下値のサポートラインとなりました。目先の上値の目安は、25日線(現在8580円近辺)で、下値の目安は、昨日空けた窓の窓埋めとなる8330円近辺が想定されます。
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