[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、イタリア・スペインの国債金利の急騰で下落しました。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2011年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、日本市場が3.1ポイント割高となりました。その要因はS&P500のPERが13.0で、東証1部平均のPERの14.2との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、震災の影響で日本の2011年のGDP予想値が2.2%程度になる(又は、日米のGDP伸び率差がOECD予想値より3.1ポイント縮まる)ことが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在-0.9%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となり、日足は200日線を下回りました。今週も、ギリシャやイタリアの政治情勢とEU諸国の国債への売り圧力が米株式相場に影響しそうですが、NYDow が200日線の上に戻れるかどうかが今後を占う上でカギとなりそうです。
② 日経225採用銘柄の今期予想増益率は7-9月期の決算発表に伴い+5.3%と低下し、今期ROE予想値は7.4%から6.7%へ悪化しています。
③ 日米とも長期金利は下降傾向で、日米の金利差は1.10%から1.07%に縮小し、為替は77円台から76円台で円高方向に動きました。今週も77円台から76円台で円高方向の動きとなりそうです。
④ OECDによる日米の2011年の実質GDP伸び率は改定され日本が-0.9%で、米国は+2.6%と予想されていますので、この面では日本市場にとって3.5ポイント分の弱気材料です。
⑤ 11月2週は売り越しで11月3週は売り越ししだった可能性が高く、今週も売り越しが予想されます。
5つのポイントのうち①②③⑤が弱気材料でした。今週も、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、7.4ポイント割安となりました。先週比2.8ポイント割安幅は縮小しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。200日移動平均線乖離率は-11.6%となり先週と比較してマイナス幅が拡大しました。総合乖離率は-20.2%となりマイナス幅が拡大しました。3つがマイナスですので中期トレンドは、”赤信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の下に在りますので、短期的トレンドには"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には赤信号"で中期的には"黄信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、アフリカ・中東政情不安、資源高、新興国の利上、世界景気後退懸念などのリスクはやや後退しているものの欧州の政府債務問題、不動産市場の低迷、雇用指標の停滞が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が2013年まで継続する見通しの中、7-9月期の企業決算は概ね好調である点と10-11月の経済指標が落ち着きてきた点が挙げられます。一方、日本市場の7-9月期の企業決算では今期業績の伸び率が鈍化してきており、下振れに要注意です。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみ合いで、短期は下降トレンドとなっています。日本市場は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドとなっています。
目先の状況を分析すると、EUの政府債務問題による金融危機については、LIBORのドル3ヶ月物金利は上昇傾向で、要警戒状態が続いています。一方、先週の為替は76円台半ばまで円高が進みました。米国債金利は下降ぎみで、日米金利差は縮小しており、為替は円高傾向です。中期的な円高リスクも払しょく出来ていません。
先週の米国市場は、欧州債務問題に対する懸念再燃で下落しました。今週は200日線を回復できるか否かが注目点です。
先週の日経平均は、下降中のボリンジャーバンド-2σに沿って下落しました。今週の日経平均も、欧州債務問題に揺れる米国市場や為替などを睨んだ動きとなりそうで、目先は、引き続きボラティリティーの高い状況が続きそうです。今週も上値が25日線(現在8710円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-2σ(現在8380円近辺)の間での推移が想定されます。例年、11月の後半に安値を付けると云うアノマリーがありますので考慮が必要です。逆に云えば、底入れも近いとも云えそうです。
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