[市況]
3日のNYDowとNASDAQは大幅上昇しました。4日の日経平均先物は、前日比100円高で寄り付き、午前中は110円高から40円高の範囲で上げ幅を縮める動きでした。午後は同じレンジ内の動きから、引けにかけて上げ幅を130円高まで拡大し、最終的に110円高で取引を終わりました。日経平均は160円高で引け、出来高は16.71億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、870万株の売り越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅が縮小しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利な状況です。
3日の米国市場では、ECBによる予想外の0.25%の利下げに加え、ギリシャが財政赤字削減策を問う国民投票を実施しない見通しとの報道などを手掛かりに買いが膨らみました。ただ、ECBのマリオ・ドラギ新総裁が理事会後の記者会見で欧州景気が緩やかな後退局面に入るとの見通しを示したことで、株価指数は一時下げに転じる場面もありました。
4日の日本市場では、FRBが追加金融緩和に前向きな姿勢を示したことや、ギリシャの国民投票が見送られるとの報道で、米国市場が続伸したことを受けて、投資家心理が改善し、主力の輸出株が買われました。アジア株の堅調さや対ドルで円相場が円安に振れたことで、大引けにかけて一段高となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は9日線の下に在りますが、25日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。総合乖離率は-9.2%でマイナス幅が縮まりました。200日線との乖離率は-8.0%でマイナス幅は縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の中に入りました。2つの要素がマイナスですので、中期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線、9日線の下に在ります。
NYDowは25日線の上に在り、200日線、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは25日線の上に在り、200日線、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が8.3ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場は1.6ポイント割安幅が拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差(3.5ポイント)と金利差、予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 3.86ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災復興の日本経済への影響」、「世界の景気と金・穀物・原油価格の動き」、「米国の景気、雇用状況、住宅市況と追加金融緩和の行方」、「欧州の債務問題による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。米国の7-9月期のGDPは年率で2.5%増と市場予想並みだったものの、個人消費は大幅増となりました。7-9月期の主要企業の決算発表は好決算が勝っているようです。経済指標では9月の鉱工業生産指数は市場予想並みで、9月の個人消費支出、10月のミシガン大学消費者信頼感指数、9月の耐久財受注、10月のフィラデルフィア連銀指数、9月の小売売上高などは市場予想を上回りましたが、10月のISM非製造業景況感指数、10月のISM製造業景況感指数、10月のシカゴ購買部協会景気指数、10月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のシカゴ連銀全米活動指数、9月の景気先行指標総合指数、10月のNY連銀製造業景気指数は予想以下となりました。9月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が10万3千人増加し、6万人程度の増加を見込んだ市場予想を大幅に上回りました。ただ、失業率は9.1%と前月と同水準で高止まり状態です。一方、住宅関連では9月の住宅着工件数、10月の住宅市場指数が予想以上となりましたが、9月の中古住宅販売件数が予想以下となりました。8月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で3.8%低下しました。市場予想の3.5%低下より弱い結果でした。7月に入り景気指標は改善傾向だったものの、8-9月は陰りが出ていました。10月に入り過度の景気後退懸念は無くなりつつあります。ただ、雇用と住宅関連の回復は鈍く金融緩和継続の主な原因となっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインなど欧州各国の財政赤字による国債の金利上昇が金融システム不安再燃の懸念を生んでいます。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBは景気認識を引き下げ、短期金利を2013年半ばまでは超低金利で維持することを表明しました。これは長期的な円高要因です。一方、中国を初めとする新興国の利上げは景気減速で一服しています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は11月01日 0.4317% → 11月02日 0.4331% → 11月03日 0.4350%となり上昇は継続しています。2010年の欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を超えましたので、金融システム危機が再燃してもおかしくない状態が続いています。ここ2年のMAXは昨年6月17日の0.539%です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが14.2、PBRが0.97、ROEが6.8%となっています。PBRが1.0以下ですので長期的には買い場と思われますが、決算発表が進むに連れ業績予想の下方修正が増えてきています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの上昇率ほどは上げませんでした。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-4.8%となり、日経平均は430円の割安で、割安幅が拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-690円 ~ -160円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べ弱い動きとなっていますが、今日は弱い動きが加速しました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.09と拡大したものの、為替はもみ合いです。ここ数日、日米金利差は縮小ぎみに変化し、円高圧力となっています。
テクニカルには、米国市場は、中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。一方、日経平均は中期もみ合いで、短期ももみ合いです。
ファンダメンタル面では、EUの政府債務問題が欧米の銀行の不良債権となり金融危機が再来するか否か、世界の景気後退が米国の主要企業の業績に影響するか否かが引き続き、今後のテーマとなりそうです。LIBOR銀行間金利は上昇が続いており、警戒感が後退する気配は見えません。欧州財政問題が金融危機に発展する要警戒状態が続いています。今後も金利の動きが注目されます。また、雇用・景気の減速懸念は払拭出来ていません。このような、相場環境の中、今夜の米国市場では10月の雇用統計、G20首脳会議が注目されそうです。
今日の日経平均は25日線を上回り、3日に空けた窓の窓埋めとなる8830円に接近しました。目先の上値の目安は、ボリンジャーバンド+2σ(現在9040円近辺)で、下値の目安は25日線(現在8730円近辺)が想定されます。
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