[市況]
12日のNYDowとNASDAQは上昇しました。13日の日経平均先物は、前日比50円高で寄り付き、午前中は、60円高と30円安の間で徐々に値を下げる動きとなりました。午後は一段安となり150円安となる場面もありましたが、最終的に30円安で取引を終わりました。日経平均は67円安で引け、出来高は28.3億株とSQ日で高水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、120万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅が拡大しました。個別銘柄に関しては「売り」が有利な状況です。
12日の米国市場では、朝方の株式相場は週間の新規失業保険申請件数が市場予想を上回ったほか、4月の小売売上高が予想に達しなかったこと、また中国の預金準備率引き上げなどで、売りに押される場面が目立ちました。しかし、5日の安値を下回らなかったことが下値不安を和らげ、原油相場が上げに転じたのをきっかけに株価指数は上昇に転じました。
13日の日本市場では、米市場高を好感し、朝方に9700円台半ばに上昇する場面がありました。ただ、枝野幸男官房長官が、東電への公的資金注入について金融機関の債権放棄の必要性に言及したため、後場は大手銀行株に売りが膨らんだことや、パキスタンでのタリバンによる自爆テロ報道で円が急騰するなど、全体の地合いが悪化しました。
[テクニカル視点]
日経平均は9日線の下に在りますが、25日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。総合乖離率は-6.0%とマイナス幅が拡がりました。200日線との乖離率は-1.8%とマイナス幅が拡がりました。日経平均は一目均衡表の雲の上に在ります。1つの要素がプラスですので、中期的トレンドは黄信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。
NYDowは、200日線、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。一目均衡表では雲の上に在ります。
NASDAQは、200日線、25日線の上に在り、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上に在ります。米国市場の短期トレンドは黄信号が点灯しています。中期トレンドは青信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が12.5ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場の割安幅は 1.3ポイント拡がりました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差と予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 0.58ポイント割安となっています。
市場は現在、「福島原発の行方」、「中東・北アフリカ情勢と原油価格」、「米国の景気と雇用状況と住宅市況」、「欧州の財政赤字による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。FRBは2011年6月末までに米国債6000億ドルを購入する追加金融緩和策を実行中ですが、終了後も緩和的な政策は続きそうです。米国の1-3月期のGDPは年率で1.8%に減少しました。1-3月期の主要企業の決算発表は、好調な決算企業が勝り、支援材料となっています。経済指標では、3月の耐久財受注、4月の消費者信頼感指数、3月の鉱工業生産指数、4月のミシガン大学消費者態度指数、4月のニューヨーク連銀景気指数、2月の個人消費支出などは市場予想を上回りましたが、4月のフィラデルフィア連銀景気指数が前月比で大幅低下し、4月のISM製造業景況感指数は予想の範囲ながら前月より低下し、4月の小売売上高、4月のISM非製造業景況感指数、4月のシカゴ購買部協会景気指数は予想以下となりました。4月の雇用統計は、雇用者数の増加幅が244,000人増と市場予想以上となりましたが、失業率は8.8%から9.0%と前月から悪化しました。一方、住宅関連では、3月の新築住宅販売件数、3月の中古住宅販売件数、3月の住宅着工件数は予想以上でしたが、2月の新築住宅販売件数が過去最低を更新しました。2月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で-2.6%の低下となりました。昨年9月以降の景気関連の経済指標は改善傾向でしたが、ここにきて、景気と雇用指標に陰りもでてきました。また、住宅関連の回復は鈍く金融緩和解除の足かせとなっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを初めとする欧州各国の財政赤字拡大が金融システム不安再燃の懸念を残しています。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、6月末で大幅なドル供給策は終了するものの、金利は据え置かれ、緩和的な政策は継続されるとのFRBによる方向が示されました。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は05月10日 0.2640% → 05月11日 0.2622% → 05月12日 0.2607%となり低水準で低下傾向です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%を下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが16.0、PBRが1.11、ROEが6.9%となっています。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの上昇にも関わらず下げました。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.5%となり、日経平均は50円の割安で、割安幅が拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-170円 ~ +300円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて弱い動きに転換していましたが、今日は弱い動きが拡大しました。
米国市場は、中期上昇トレンドで、短期はもみ合いです。一方、日経平均は中期もみ合いとなり、短期は下降トレンドです。
日経平均を中長期的に見ると、テクニカルには米国市場に比べて割安で、ファンダメンタルにも割安です。
LIBORのドル3ヶ月物金利は低水準で、欧州財政問題が金融不安に発展する気配とは言えない水準です。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は2.11%と拡大したものの、為替は円高方向です。一方、米国市場は景気に陰りが見え始め、商品市況安が悪材料視されています。今夜の米国市場は5月のミシガン大学消費者信頼感指数の発表が注目されそうです。
ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。日経平均は、いずれ、震災の企業業績に与える影響やGDP低下懸念も問題となり、二番底を探る動きとなる余地はありそうです。今日の動きで、短期は下降トレンドで中期とももみ合いとなりましたが、テクニカルには、弱含みです。ファンダメンタル面では、米国景気の減速懸念と原油などの商品市況の動きが注目点となりそうです。国内は引き続き3月期決算の内容が影響しそうですが、買い材料は少なそうです。しばらく、弱含みの中、もみ合い相場が続きそうです。目先の価格レンジは9750円から9550円が想定されます。
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