[市況]
5月15日、NYDowとNASDAQは上昇しました。5月16日の日経平均先物は、前日比370円高で寄り付くと、午前中は520円高から140円高の間で上下し、午後は280円高から590円高と上昇幅を拡げて、結局、510円高で取引を終了しました。日経平均の終値は534円高の38920円で、出来高は22.17億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態となりました。
空売り比率は、5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
5月15日の米国市場では、4月の消費者物価指数(CPI)の伸びが市場予想を下回ったことから、FRBが利下げを先送りするとの懸念が後退し、買いが優勢となりました。また、長期金利の低下を受け、高PERのハイテク株を中心に、相対的な割高感が薄れたとみた買いが向かいました。NYDowは続伸し、最高値を更新しました。NASDAQも3 日続伸し、連日で最高値を更新しました。
5月16日の日本市場では、前日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇した流れを受け、半導体関連株などに買いが先行しました。米長期金利の低下を受けて外国為替市場で円相場が円高ドル安方向に推移したことが重石となり、朝方の買いが一巡したあとは上値の重い展開となりましたが、米株価指数先物の上昇を追い風に、午後は再び運用リスクをとる動きが優勢となりました。日経平均は大幅に3日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にあり、25日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変りました。
総合乖離率は+13.6%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+11.3%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうち2つがプラスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にあり、9日線と25日線を上回りました。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-1.9ポイントと前日比横ばいで、日経平均が740円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+2.3ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が900円ほど割高であることを示しています。
日経VIは17.39と前日より低下し、VIXも12.45と前日より低下しました。両指数ともに、変動率の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-4.8、米国-0.4と日本が4.4ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.4、米国が+3.9)は0.5ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.96ポイント(日経平均換算で85870円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP速報値は前期比年率1.6%増で、市場予想の2.4%増を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、2月の製造業受注は市場予想を上回りました。また、4月のISM製造業景況指数、3月の鉱工業生産指数は市場予想と一致しました。一方、4月の小売売上高、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、4月の消費者物価指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月のISM非製造業景況指数、4月のシカゴ購買部協会景気指数、4月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、3月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比17.5万人増で、市場予想の24.0万人増を下回りました。また、失業率は3.9%で、前月の3.8%から悪化しました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
3月の中古住宅販売仮契約指数、3月の新築住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、5月の住宅市場指数、3月の中古住宅販売件数、3月の住宅着工件数は予想を下回りました。2月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+7.3%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性は高いと予想していますが、利下げ開始時期は不透明です。ECBは、政策金利の据え置きを続けていますが、金融緩和を検討し始めているとは示唆していません。一方、日銀は、2%のインフレ目標を維持しつつも、3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除と、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了を決定しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、5月10日 5.5835% → 5月13日 5.5839% → 5月14日 5.5883%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが17.39、PBRが1.49となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.6%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-0.3%で、こちらは3か月前より10.2ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.3%で、日経平均の割安幅は1280円から520円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1650円から-520円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.48ポイントから3.41ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
5月15日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、4月の住宅着工件数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の鉱工業生産指数のほか、アプライド・マテリアルズ、バイドゥ、ウォルマート、ディアなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを240円ほど上回り、下値は想定ラインを480円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+200円(現在39290円近辺)が上値の目安に、25日線+100円(現在38510円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは、変動率の高まりを示す20を下回っており、前日比で低下しました。また、信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。きょうの日経平均は一段高となりました。ただ、個別には下落した銘柄も多く、緩やかな上昇傾向にあるものの、上値の重い展開が続きそうです。
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