[市況]
5月1日、NYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。5月2日の日経平均先物は、前日比210円安で寄り付くと、午前中は250円安から120円高と上昇に転じ、午後は160円高から30円安とマイナス圏に戻して、結局、20円安で取引を終了しました。日経平均の終値は37円安の38236円で、出来高は14.93億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスは場を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
空売り比率は、5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱まりました。
5月1日の米国市場では、FOMCの結果公表とパウエルFRB議長の会見を波乱なく通過した安心感から、株買いが広がりました。ただ、4月のISM非製造業景況指数が市場予想を下回ったことが伝わると、景気の先行きに対する警戒感が広がり、引けにかけて急速に売りがかさみました。半導体大手のAMDが大幅安となり、他の半導体株に売りが波及したことも重石となりました。結局、NYDowは反発し、NASDAQは続落しました。
5月2日の日本市場では、前日の米株式市場でハイテク株が売られた流れが引き継がれ、値がさの半導体関連株などに売りが先行しました。しかし、売りが一巡すると、日本株の根強い先高観から、押し目買いを入れる動きが優勢となりました。午後は、日本の連休中に海外相場が大きく動くおそれがあるとの警戒感から、様子見ムードが強まりました。結局、日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は+8.4%とプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+10.1%とプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうち2つがプラスであり、中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、25日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下に出ました。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+3.8ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が1450円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの差は、+6.0ポイントとプラス幅を縮め、日経平均が2290円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.91と前日より低下し、VIXも15.39と前日より低下しました。日経VIは、変動率の高まりを示す20を下回りました。NYDowと比べて、日経平均は強い状態ですが、前日比で強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-5.1、米国-0.2と日本が4.9ポイント割安ですが、OECDの2025年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.4、米国が+3.9)は0.5ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.34ポイント(日経平均換算で104330円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP速報値は前期比年率1.6%増で、市場予想の2.4%増を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、3月の小売売上高、3月の消費者物価指数、2月の製造業受注は市場予想を上回りました。また、4月のISM製造業景況指数、3月の鉱工業生産指数は市場予想と一致しました。一方、4月のシカゴ購買部協会景気指数、4月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、4月のミシガン大学消費者信頼感指数、3月の耐久財受注、4月のニューヨーク連銀製造業景況指数、3月のISM非製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は5勝7負で、景気面では,弱気材料ですが、利下げ次期が早まるという面では強気材料です。
米国の3月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比30.3万人増で、市場予想の20.0万人増を上回りました。また、失業率は3.8%で、前月の3.9%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利下げ次期が遅れるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
3月の中古住宅販売仮契約指数、3月の新築住宅販売件数は市場予想を上回りました。一方、3月の中古住宅販売件数、3月の住宅着工件数、4月の住宅市場指数は予想を下回りました。2月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+7.3%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
市場は、FRBが2024年内に複数回の利下げをおこなう可能性は高いと予想していますが、利下げ開始時期は不透明です。ECBは、政策金利の据え置きを続けていますが、金融緩和を検討し始めているとは示唆していません。一方、日銀は、2%のインフレ目標を維持しつつも、3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除と、ETFの買い入れ終了、YCC(長期金利の誘導)の終了を決定しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、4月26日 5.5911% → 4月29日 5.5884% → 4月30日 5.5897%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇していますが、直近ピークアウトしています。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが16.84、PBRが1.52となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.2ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+8.5%で、こちらは3か月前より0.1ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.2%となり、日経平均の割安幅は970円から470円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1380円から-470円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.81ポイントから3.72ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的・中期的にもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
5月2日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、3月の貿易収支、3月の製造業受注のほか、アップル、モデルナ、シグナなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを280円ほど下回り、下値は想定ラインを50円ほど上回りました。目先は、25日線-100円(現在38730円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在37910円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは前日比で低下し、変動率の高まりを示す20を下回りました。また、信用の売り圧力は、弱まりました。連休中の海外市場次第ですが、引き続き、日経平均が25日線を越えられるかどうかが、目先の注目点です。
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