[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、経済指標が労働市場の過熱感の緩和を示し、FRBの金融引き締めが長期化するとの警戒が後退したことから、株価指数は週間では上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+1.43% NASDAQ:+3.25% S&P500:+2.50%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2024年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.66ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが20.2に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの15.4との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.66ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが54.4程度になるか、又は、日経平均が115,700円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は82,990円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、82,990円ほど魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは縮小しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。今週は、NYダウが25日線の上に戻れるか否かに注目。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+8.6%となりました。3ヶ月前に比べて0.4ポイント悪化しました。また、利益伸び率は+2.9%となりました。3ヶ月前に比べて+1.1%ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利は低下し、日米間の金利差は3.59から3.56に縮小して、ドル円は147円から144円の範囲で円高方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+0.07%上昇しました。
④ OECDの日米の2024年の名目GDP伸び率は、日本が+2.96%で、米国は+3.40%と予想されていますので、この面では日本市場の方が0.44ポイント劣ります。
⑤ 8月第4週は売り越しでした。8月第5週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に2.6ポイント(日経平均に勘算すると850円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に8.1ポイント(日経平均に勘算する2650円程度)割高です。
NYダウ対する日本市場の強さは、この週に拡大しました。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で 13.1 と低下しました。 日経 VI は 週間で 16.9と低下しました。日米市場とも、不安心理はなりました。
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには"青信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。日経平均の総合乖離率は+13.8%で、200日移動平均線との乖離率は+11.2%でした。3つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。また、一目均衡表の雲の中に在ります。
NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。また、一目均衡表の雲の中に在ります。
短期的には"黄信号”で、中期的にも"黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると目先、世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期ももみあいです。
日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2023年1月より円安方向へ転換しています。今週は143円台から146円台が想定されます。
今週の米国は、比較的軽めの週となり、ISMサービス業PMI、製造業受注、貿易統計が注目されます。その他では、オーストラリアとカナダが金利政策を発表します。また、トルコ、韓国、ロシアなどのインフレ率が注目されます。オーストラリア、日本ではGDP成長率が発表されます。さらに、中国のサービス業PMIが発表されます。
先週の日経平均は、想定レンジを上ぶれしました。上値は想定ラインを590円ほど上回り、下値は想定ラインを580円ほど上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+2σ(現在33200円近辺)で、下値が25日線(現在32250円近辺)の間での動きが想定されます。
今週は米国の経済指標に比較的影響されにくい週となりそうです。日本市場のボラティリティーは低下傾向で、売り圧力も低下傾向ですが、上値抵抗線に接近していますので、これを抜けるかどうかで今月の行方が決まりそうです。
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