[市況]
7月24日、NYDowとNASDAQは上昇しました。7月25日の日経平均先物は、前日比110円高で寄り付くと、午前中は110円高から80円安と下落に転じ、午後は120円安から50円高とプラス圏に戻して、結局、30円高で取引を終了しました。日経平均の終値は18円安の32682円で、出来高は14.41億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
空売り比率は5日平均を2日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
7月24日の米国市場では、金利上昇への警戒感が後退するなか、米企業の4~6月期決算への期待感から、買いが優勢となりました。7月のS&Pグローバル製造業PMIが市場予想を上回り、景気の底堅さを示したことも支援材料となりました。結局、NYDowは11日続伸し、NASDAQは3営業日ぶりに反発しました。
7月25日の日本市場では、国内主要企業の決算発表や日銀の金融政策決定会合を前に持ち高調整の売りが主力株の一角に出て相場を押し下げました。一方で、中国当局の政策への期待から香港株や上海株が上昇したことが投資家心理を支え、中国関連銘柄には買いが入りました。日経平均は小幅に反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は+18.7%とプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+13.8%とプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線の下にありますが、200日線の上にあり、25日線を上回りました。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-4.2ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が1370円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+7.7ポイントとプラス幅を縮め、日経平均が2720円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.32と低下し、VIXは13.91と上昇しました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を下回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態ですが、前日比で強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.2、米国1.0と日本が5.2ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)は0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.76ポイント(日経平均換算で84270円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP確定値は前期比年率2.0%増で、改定値の1.3%増から上方修正されました。また、1~3月期の米企業の決算は、おおむね好調でした。
経済指標を見てみます。
7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月のISM非製造業景況指数、6月のミシガン大学消費者信頼感指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月の耐久財受注は市場予想を上回りました。一方、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の小売売上高、6月の鉱工業生産指数、6月の消費者物価指数、5月の製造業受注、6月のISM製造業景況指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は5勝7負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比20.9万人増で、市場予想の24.0万人増を下回りました。一方、失業率は3.6%で、前月の3.7%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
5月の新築住宅販売件数数は市場予想を上回りました。また、7月の住宅市場指数は市場予想と一致しました。一方、6月の中古住宅販売件数、6月の住宅着工件数、5月の中古住宅販売仮契約指数は予想を下回りました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.7%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年内にあと2回の利上げをすると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。長期金利の許容変動幅も0.5%に据え置かれています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、7月19日 5.5951% → 7月20日 5.6071% → 7月21日 5.6128%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年7月21日に記録した5.6128%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが15.14、PBRが1.36となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+2.3%で、こちらは3か月前より0.9ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.2%となり、日経平均の割安幅は1010円から1040円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1080円から-70円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.40ポイントから3.43ポイントに拡大しました。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均も、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
7月25日の米国市場では、5月のS&Pコアロジック/ケース・シラー住宅価格指数や、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、IMFの世界経済見通しのほか、マイクロソフト、ビザ、GE、バイオジェン、3M、GM、ベライゾン・コミュニケーションズ、TIなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを300円ほど下回り、下値は想定ラインを180円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在33010円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在32330円近辺)が下値の目安になりそうです。
信用の売り圧力はかなり弱まっており、個別銘柄は買いが有利な展開が続いています。ただ、日経平均のボラティリティーはまだ高く、日経平均は下降中の25日線を上回ることができていません。この状況はしばらく続きそうです。
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