[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、銀行の健全性に対する懸念とインフ懸念が共に後退して、株価指数は週間では上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+2.02% NASDAQ:+2.19% S&P500:+2.35%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2024年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.51ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが19.8に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの15.3との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.51ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが49.0程度になるか、又は、日経平均が106,520円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は73,330円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、73,330円分魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは、縮小しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYダウが25日線の上を維持できるか否かに注目。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+9.0%となりました。3ヶ月前に比べて同水準です。また、利益伸び率は+2.4%で3ヶ月前に比べて-0.8%ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は3.38から3.45に拡大して、ドル円は142円から145円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+0.05%上昇しました。
④ OECDの日米の2024年の名目GDP伸び率は、日本が+2.96%で、米国は+3.40%と予想されていますので、この面では日本市場の方が0.44ポイント劣ります。
⑤ 6月3週は売り越しでした。6月4週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①と③が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に1.0ポイント(日経平均に勘算すると330円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に13.0ポイント(日経平均に勘算する4310円程度)割高です。
NYダウ対する日本市場の強さは、この週に縮小しました。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で 13.6 とやや上昇しました。 日経 VI は 週間で 19.1と低下しました。米国市場は楽観的で、日本市場は、やや過熱していることを示唆しています。
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには"青信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。日経平均の総合乖離率は+30.0%で、200日移動平均線との乖離率は+17.3%でした。3つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQも、
米国市場では、NYDowは、。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には"青信号”で、中期的にも"青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。日本市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2023年1月より円安方向へ転換しています。今週は144円台から146円台が想定されます。
今週の米国では、雇用統計とFOMC議事録が最も注目されます。また、ISM製造業・サービス業PMI、工場受注、貿易統計が発表されます。米国以外では、インド、ロシア、韓国、カナダなどの製造業PMIや韓国、トルコ、メキシコのインフレ率も注目されます。さらに、オーストラリアの金利政策決定、カナダの雇用統計、中国のサービス業・製造業PMI、日本の日銀短観などが投資家の注目材料となります。
先週の日経平均は、想定レンジを上振れしました。上値は想定ラインを160円ほど上回り、下値は想定ラインを1020円ほど上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+2σ(現在34260円近辺)で、下値が25日線(現在32560円近辺)の間での動きが想定されます。
今週は雇用統計とFOMC議事録の結果などに影響される週となりそうです。ただ、米国市場はボラティリティーが低下しており、楽観的な市場環境が続きそうです。日本市場の月初は上昇しやすいというアノマリーもあり、強気相場が期待できそうです。
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