[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、FRBやECBの利上げ継続が一段の景気悪化を招くとの懸念が根強い状態が続く中、自律反発の動きも見られ、株価指数は週間ではまちまちの動きとなりました。
週間変動率 NYダウ:+0.86% NASAQ:-1.94% S&P500:-0.20%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.81ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが17.4に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの12.2との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.81ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが29.4程度になるか、又は、日経平均が63250円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は37020円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、37020円分魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さはやや縮小しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。今週は、NYダウが25日線を上回れるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.0となりました。3ヶ月前に比べて0.1ポイント悪化しています。また、利益伸び率は+6.3で3ヶ月前に比べて2.2%ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は3.24から3.38に拡大したものの、ドル円は137円から130円の範囲で円高方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.49%下落しました。
④ OECDの日米の2024年の名目GDP伸び率は、日本が+2.51%で、米国は+3.54%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.03ポイント劣ります。
⑤ 12月2週は売り越しでした。12月3週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、③が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に7.3ポイント(日経平均に勘算すると1920円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に6.1ポイント(日経平均に勘算する1600円程度)割安です。
米国市場に対する日本市場の強さは、この週に低下しました。 米国市場のボラティリティを示す指標である VIX は、1 週間で 20.9 まで低下しました。
日経 VI は 1 週間で 20.2
まで上昇しました。両指数とも楽観と悲観の境界線である20以上です。
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには"赤信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-13.3%で、200日移動平均線との乖離率は-3.7%でした。3つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"赤信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。
短期的には”赤信号”で、中期的には”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。
為替市場を分析すると、2021年初頭から円安トレンドが続いていましたが、11月より円高方向へ転換しました。今週は134円台から130円台が想定されます。
今週は、2022 年の最後の週となりますが、重要な経済発表がほとんどないため、焦点は来年の株式市場の行方に移ります。
ただ、多くの投資家は休暇中で、市場にいくらかの休息をもたらすことを望んでいます。 米国では、住宅データといくつかの地域の
PMI 測定値が注目を集めます。 また、日本は小売売上高、鉱工業生産、失業率を発表し、韓国、スペイン、ロシアはインフレ率に焦点を当てます。
先週の米国のボラティリティは週間で上昇し、株価指数はまちまちでした。今週の日経平均はボリンジャーバンド-2σを挟んだ動となりそうです。
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