[市況]
12月16日、NYDowとNASAQは大幅下落しました。12月19日の日経平均先物は、前日比280円安で寄り付くと、午前中は190円安から390円安の間で上下し、午後は340円安から250円安の間でもみあって、結局、250円安で取引を終了しました。日経平均の終値は289円安の27237円で、出来高は9.71億株と比較的高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を2日連続で上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強い状態です。
12月16日の米国市場では、FRBやECBの利上げ継続が一段の景気悪化を招くとの根強い懸念から、消費関連株を中心とした幅広い銘柄が売られました。ただ、16日は株価指数と個別株の先物・オプション取引の清算期限が重なる「クアドルプル・ウィッチング」だったこともあり、値動きは不安定で、相場は取引終了にかけて下げ渋りました。結局、NYDowとNASDAQは3日続落しました。
12月19日の日本市場では、景気後退懸念から前週末の米株式市場が下落した流れが引き継がれ、景気敏感株などに売りが向かいました。一方で、経済再開の恩恵を受けやすい銘柄の一角が買われたほか、「政府と日銀が2013年に定めたアコード(共同声明)の見直し論が浮上している」との報道を受け、銀行株や生命保険株にも思惑的な買いが入りました。日経平均は3日続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-3.6%とマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率は-0.0%とマイナスに転換しました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうち2つがマイナスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下に出ました。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+9.8ポイントとプラス幅を縮め、日経平均が2670円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は、-1.5ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が410円ほど割安であることを示しています。
日経VIは18.87と前週末より上昇し、VIXは22.62と前週末よりやや低下しました。NYDowと比較して、日経平均は弱い状態であり、前週末より弱さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.8、米国-2.1と日本が5.7ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.5、米国が+3.5)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.66ポイント(日経平均換算で37530円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP改定値は前期比年率2.9%増で、速報値の2.6%増から上方修正されました。また、7~9月期の米企業の決算は、ハイテク株の下方修正が目立ちます。
経済指標を見てみます。
12月のミシガン大学消費者信頼感指数、11月の製造業受注、11月のISM非製造業景況指数、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、11月の鉱工業生産指数、11月の小売売上高、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数、11月の消費者物価指数、11月のISM製造業景況指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ちるという面では強気材料です。
米国の10月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比26.1万人増で、市場予想の20.5万人増を上回りました。一方、失業率は3.7%で、先月の3.5%から悪化しました。雇用は、景気面ではやや強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
10月の中古住宅販売仮契約指数、10月の新築住宅販売件数数、10月の中古住宅販売件数、10月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、11月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+10.4%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年3月まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、12月に0.5%の利上げに原則し、資産圧縮を2023年3月から開始する予定です。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、12月14日 4.7362% → 12月15日 4.7377% → 12月16日 4.7458%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年11月30日に記録した4.7785%がここ5年間の最高金利です。市場金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.45、PBRが1.13となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は+6.5%で、こちらは3か月前より1.9ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.4%となり、日経平均の割高幅は210円から380円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+70円から+530円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.23ポイントから3.26ポイントに拡大しましたが、ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均も、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBは量的緩和政策を終了し、量的引き締めの検討を開始しています。
12月19日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。ドイツの12月のIfo景況感指数などが注目されるでしょう。引き続き、長期金利や原油価格も株価に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを300円ほど下回り、下値は想定ラインを40円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-2σ+200円(現在27650円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-3σ(現在27210円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日連続で上回りました。日経VIは上昇しましたが、20を下回っています。日経平均は続落し、200日線に到達しました。ここでリバウンドできるかどうか、中長期的にも正念場を迎えています。
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