[市況]
6月8日、NYDowとNASDAQは下落しました。6月9日の日経平均先物は、前日比40円高で寄付くと、午前中は10円安から130円高と上昇幅を拡げ、午後は210円高から70円高と上昇幅を縮めて、結局110円高で取引を終了しました。日経平均の終値は12円高の28246円で、出来高は12.87億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態ですが、買われ過ぎの水準です。
また、空売り比率は、5日平均を上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや強まりました。
6月8日の米国市場では、景気の先行きに対する警戒感から、幅広い業種で売りが優勢となりました。欧州の金融大手クレディ・スイスが「ウクライナ戦争や主要国の金融引き締めを背景に企業の資金調達が低調になり、4~6月期に赤字に転落する」と発表したことや、OECDが世界の経済成長率見通しを下方修正したことなどが投資家心理を冷やしました。NYDowとNASDAQは3営業日ぶりに反落しました。
6月9日の日本市場では、円安ドル高を受けて自動車など輸出関連株が買われました。また、原油高を受けて資源関連株が買われました。ただ、短期的な過熱感から主力株の一角には利益確定の売りが出て、相場の上値を抑えました。日経平均は小幅に5日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+11.0%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率は+1.1%と前日比で横ばいでした。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線の上にありますが、9日線と200日線の下にあります。
NYDowは、25日線の上にありますが、200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、25日線の上にありますが、200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+16.1ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が4550円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+6.1ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が1720円ほど割高であることを示しています。
日経VIは20.40と、投資家の不安心理の高まりを示す20を上回りました。一方、VIXは23.96と前日比でやや低下しましたが、日経VIよりは高い状態です。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いており、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.2、米国-2.5と日本が4.7ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.55ポイント(日経平均換算で7480円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP改定値は前期比年率1.5%減で、速報値の1.4%減を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちでした。
経済指標を見てみます。
5月のISM製造業景況指数、5月のシカゴ購買部協会景気指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、4月の鉱工業生産指数、4月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。また、4月の小売売上高は市場予想と一致しました。一方、5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月の耐久財受注、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面で中立材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比39.0万人増で、市場予想の31.8万人増を上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の新築住宅販売件数数は市場予想を上回りました。一方、4月の中古住宅販売仮契約指、4月の中古住宅販売件数、4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+21.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、金融緩和政策を継続しています。2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では6月1日 1.6260% → 6月6日 1.6650% → 6月7日 1.6904%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.52、PBRが1.22となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.2ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.7%で、こちらは3か月前より28.3ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.1%となり、日経平均の割安幅は200円から30円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-200円から+350円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.76ポイントから2.79ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
6月9日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数のほか、ECB定例理事会およびラガルド総裁の記者会見などが注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを110円ほど下回り、下値は想定ラインを250円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ+200円(現在28500円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ+200円(現在27840円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を上回り、信用の売り圧力はやや強まりました。日経VIは、投資家の不安心理の高まりを示す20を上回りました。テクニカルには買われ過ぎを示すサインも出始めており、日経平均は、目先、一服してもいい頃合いとなりました。
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