[市況]
6月17日、NYDowは下落し、NASDAQは上昇しました。6月20日の日経平均先物は、前日比280円高で寄付くと、午前中は390円高から330円安と下落に転じ、午後は270円安から0円安と下落幅を縮めて、結局、前週末の終値と同値で取引を終了しました。日経平均の終値は191円安の25771円で、出来高は11.78億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。
また、空売り比率は、5日平均を3日ぶりに上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強まりました。
6月17日の米国市場では、原油先物相場の大幅下落を受けてインフレへの懸念がやや和らぎ、消費関連株や景気敏感株が買われました。また、このところ下げがきつかったハイテク株も買い直されました。ただ、世界的な金融引き締めが景気悪化を招くとの見方は根強く、買い直しの勢いは限定的でした。3連休を意識したリスク回避の売りも重石となりました。結局、NYDowは小幅に続落し、NASDAQは反発しました。
6月20日の日本市場では、前週の急ピッチな株安の反動で自律反発狙いの買いが先行しましたが、世界的な金融引き締めが景気を減速させるとの懸念は根強く、朝高後はリスク回避の売りが優勢となりました。20日の米国市場が休場ということもあり、午後は様子見ムードが強まりました。日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-16.4%と前週末よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-7.7%と前週末よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドは赤信号が点灯しています。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+15.5ポイントと前週末よりプラス幅を縮め、日経平均が3990円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+5.6ポイントと前週末よりプラス幅を縮め、日経平均が1440円ほど割高であることを示しています。
日経VIは26.40、VIXは31.13と、日米市場のボラティリティーは前週末より低下しました。VIXは、投資家の不安心理が最高レベルに高まっているとされる30を上回っています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態が続いていますが、前週末より強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.8、米国-3.0と日本が4.8ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.46ポイント(日経平均換算で19640円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP改定値は前期比年率1.5%減で、速報値の1.4%減を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、まちまちでした。
経済指標を見てみます。
5月の消費者物価指数、5月のISM製造業景況指数、5月のシカゴ購買部協会景気指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、5月の鉱工業生産指数、6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月の小売売上高、6月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注、4月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比39.0万人増で、市場予想の31.8万人増を上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の新築住宅販売件数数は市場予想を上回りました。一方、5月の住宅着工件数、6月の住宅市場指数、4月の中古住宅販売仮契約指、4月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+21.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.25%利上げし、量的緩和策を終了させることを決定しました。日銀は、金融緩和政策を継続しています。2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では6月15日 2.0295% → 6月16日 2.0634% → 6月17日 2.0958%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.50、PBRが1.12となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.2ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+0.1%で、こちらは3か月前より29.0ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.2%となり、日経平均の割安幅は190円から350円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-350円から+110円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.03ポイントから3.01ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
6月20日の米国は奴隷解放記念日(ジューンティーンス)の振替休日で、米国市場は休場です。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを120円ほど下回り、下値は想定ラインとほぼ一致しました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ-200円(現在26180円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ-200円(現在25520円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日連続で上回り、信用の売り圧力はかなり強まりました。VIXは、投資家の不安心理が最高レベルに高まっているとされる30を上回っています。日経平均のリバウンドは続きませんでした。底値圏を示すテクニカル指標も出始めていますが、一段安の可能性は高そうです。
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