[市況]
5月25日、NYDowとNASDAQは上昇しました。5月26日の日経平均先物は、前日比100円高で寄付くと、午前中は220円高から70円安と下落に転じ、午後は50円高から90円安と下落に転じて、結局70円安で取引を終了しました。日経平均の終値は72円安の26604円で、出来高は10.86億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
また、空売り比率は、5日平均を2日ぶりに上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は強まりました。
5月25日の米国市場では、幅広い銘柄に押し目買いが入りました。FRBが午後に公表した5月開催分のFOMC議事要旨は市場の想定内と受け止められ、注目されたイベントを無難に通過した安心感が勝ったようです。ただ、前日に買いが目立ったディフェンシブ株は一転して売りが優勢となりました。結局、NYDowは4日続伸し、NASDAQは反発しました。
5月26日の日本市場では、前日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇した流れが引き継がれ、主力銘柄に買いが先行しました。ただ、主力銘柄には戻り待ちの売りも出やすく、次第に伸び悩みました。また、25日夕の時間外取引で米半導体大手のエヌビディアが大幅に下落したことを受け、値がさの半導体関連銘柄が売られ、相場を押し下げました。結局、日経平均は3日続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-5.9%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-4.8%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中にあります。3つの要素のうち2つがマイナスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。
NYDowは、9日線の上にありますが、25日線と200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドに黄信号が点灯しています。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+15.6ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が4150円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+2.8ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が740円ほど割高であることを示しています。
日経VIは23.03、VIXは28.37と、日米市場のボラティリティーは下落しました。VIXは節目の30を下回っているものの、依然として高い水準で推移しています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態ですが、前日よりは強さは縮小しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.6、米国-3.1と日本が4.5ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.39ポイント(日経平均換算で5750円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP速報値は前期比年率1.4%減で、市場予想の1.0増を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、今のところまちまちです。
経済指標を見てみます。
4月の鉱工業生産指数、4月の消費者物価指数、3月の製造業受注産指数は市場予想を上回りました。また、4月の小売売上高は市場予想と一致しました。一方、4月の耐久財受注、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月のISM製造業景況指数、4月のISM非製造業景況指数、4月のシカゴ購買部協会景気指数、4月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は4勝8負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比42.8万人増で、市場予想の40万人増をやや上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%からほぼ横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の新築住宅販売件数、3月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、4月の中古住宅販売件数、4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。2月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+20.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・利上げの両面で中立材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、金融緩和政策を継続しています。2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、5月19日 1.5048% → 5月20日 1.5064% → 5月23日 1.5238%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.80、PBRが1.16となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+0.5%で、こちらは3か月前より26.3ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+2.8%となり、日経平均の割高幅は1090円から740円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+740円から+2000円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.55ポイントから2.51ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
5月25日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、1~3月期のGDP改定値、4月の中古住宅販売仮契約指数のほか、コストコ、ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリーなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを90円ほど下回り、下値は想定ラインを280円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在26890円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在26320円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日ぶりに上回り、信用の売り圧力は強まりました。VIXは節目の30を下回っているものの、高い水準で推移しており、投資家の不安心理は依然として高い状態です。日経平均は、相変わらず上値抵抗線付近で推移しており、膠着した展開はしばらく続きそうです。
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