[市況]
5月16日、NYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。5月17日の日経平均先物は、前日比10円安で寄付くと、午前中は40円安から230円高の間で上下し、午後は100円高から200円高の間でもみあって、結局150円高で取引を終了しました。日経平均の終値は112円高の26659円で、出来高は13.21億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや弱まりました。
5月16日の米国市場では、原油先物相場の上昇を受けて石油株やディフェンシブ株が買われました。上海市が6月に都市封鎖を解除する方針を示したことが材料視されました。一方で、ガソリン高が消費を冷やすとの観測から消費関連株が売られたほか、金融引き締めへの警戒感からハイテク株も売られました。結局、NYDowは小幅に続伸し、NASDAQは3営業日ぶりに反落しました。
5月17日の日本市場では、原油先物相場の上昇を受けて石油関連株が買われたほか、資源価格の先高観から資源関連株の一角が買われました。香港や上海株の上昇も投資家心理を支えました。ただ、追加の材料に乏しく、上値追いの勢いは限定的でした。4月の米小売売上高や米鉱工業生産指数などの発表を待ちたいとの思惑もあったようです。結局、日経平均は3日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にありますが、9日線の上にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は-5.6%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-4.7%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうちマイナスは2つとなり、中期トレンドも赤信号から黄信号に変わりました。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200線の下にありますが、9日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+14.7ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が3920円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+2.9ポイントと前日よりプラス幅を縮め、日経平均が770円ほど割高であることを示しています。
日経VIは24.21、VIXは27.47と、日米市場のボラティリティーは下落しました。投資家の不安心理は依然として高いものの、改善傾向にあります。NYDowと比較して、日経平均は強い状態です。前日より強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.3、米国-2.8と日本が4.5ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.38ポイント(日経平均換算で5960円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP速報値は前期比年率1.4%減で、市場予想の1.0増を下回りました。また、1~3月期の米企業の決算は、今のところまちまちです。
経済指標を見てみます。
4月の消費者物価指数、3月の製造業受注、3月の鉱工業生産指数は市場予想を上回りました。一方、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、4月のISM製造業景況指数、4月のISM非製造業景況指数、4月のシカゴ購買部協会景気指数、4月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、3月の耐久財受注、4月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、3月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は3勝9負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが速まらないという面では強気材料です。
米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比42.8万人増で、市場予想の40万人増をやや上回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%からほぼ横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
3月の中古住宅販売仮契約指数、3月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、3月の新築住宅販売件数、3月の中古住宅販売件数、4月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。2月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+20.2%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに5回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、金融緩和政策を継続しています。2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、5月11日 1.4218% → 5月12日 1.4112% → 5月13日 1.4437%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.27、PBRが1.15となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.7%となり、これは3か月前より0.3ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は-0.1%で、こちらは3か月前より33.1ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+2.7%となり、日経平均の割高幅は710円から720円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、+230円から+1050円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.67ポイントから2.67ポイントと横ばいでした。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均は、短期的・中期的にもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
5月17日の米国市場では、4月の小売売上高や、4月の鉱工業生産指数のほか、ウォルマートやホームデポなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを220円ほど下回り、下値は想定ラインを300円ほど上回りました。目先は、25日線+300円(現在27130円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在26340円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日連続で下回り、信用の売り圧力はやや弱まりました。投資家の不安心理は依然として強いものの、改善傾向にあります。日経平均は、まだ25日線の下に位置しています。4月以降、3回にわたって25日線に跳ね返されており、まだ正念場が続いています。
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