[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、FRBの積極的な金融引き締めが景気を冷やすとの懸念が強まり、幅広い銘柄が売られ、株価指数は下落しました。
週間変動率 NYダウ:-1.86%, NASAQ:-3.83%, S&P500:-2.75%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、サプライチェーン混乱の長期化による世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が2.10ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが19.4に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.0との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに2.10ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが17.8程度になるか、又は、日経平均が37250円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は10140円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は10140円分、魅力に欠けるとも言えます。
日米の長期金利差が拡大して、日本市場の弱さは拡大しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+1.8%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の下に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。今週は、NYDowが200日線の上に戻れるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.3%となりました。3ヶ月前に比べて0.2ポイント改善しています。また、利益伸び率は+29.0%で3ヶ月前に比べて6.3ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は2.60から2.66と拡大して、ドル円は126円から129円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+0.62%上昇しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率予測が公開されて、日本が+1.8%で、米国は+4.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.1ポイント劣ります。
⑤ 4月第2週は買い越しで、4月第3週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に8.9ポイント(日経平均に勘算すると2410円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に0.1ポイント(日経平均に勘算する30円程度)割安です。
週間では米国市場に対する日本市場の弱さは縮小しました。米国市場のボラティリティーは高まり、VIXは24.38と先週から上昇し、投資家の不安心理の高まりを示す20を依然として超えています。
日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには”黄信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の中に在ります。総合乖離率は-4.8%となり先週と比較しマイナス幅は拡大しました。 200日移動平均線との乖離率は-3.6%で、マイナス幅は縮小しました。2つの要素がマイナスですので、中期トレンドには、"黄信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表の雲の中に在ります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表の雲の下に在ります。
短期的には” 赤信号”で、中期的にも”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、ウクライナ紛争、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては日銀による金融緩和政策の維持が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期もみあいで、短期はもみあいです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は127円台から130円台が想定されます。
今週は、米国とユーロ圏の1-3月期のGDP速報値が注目されそうです。また、1-3月期の決算発表が続き、日銀の金融政策が発表されます。その他、米国の住宅関連指標、3月の耐久財受注、4月の消費者信頼感指数、中国の4月製造業PMIなどの経済データの発表があります。
ボラティリティーは高まり、投資家の不安心理が高い状態を示しています。また、売り圧力も強まり、今週の日経平均は、下落基調が続きそうです。
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