[市況]
4月20日、NYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。4月21日の日経平均先物は、前日比120円高で寄付くと、午前中は60円高から400円高と上昇幅を拡げ、午後は280円高から400円高の間でもみあって、結局340円高で取引を終えました。日経平均の終値は335円高の27553円で、出来高は10.29億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅をやや縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を3日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、弱まりました。
4月20日の米国市場では、市場予想を上回る四半期決算を発表したIBMなどの銘柄が買われ、相場の上昇を牽引しました。インフレの高止まりや金融引き締めの中でも景気や企業業績は底堅いとの見方が強まり、投資家心理を支えました。一方、契約者の減少が伝わったネットフリックスが急落するなど、主力ハイテク株は売られ、相場の重石となりました。結局、NYDowは続伸し、NASDAQは反落しました。
4月21日の日本市場では、米長期金利の上昇に対する過度な警戒感が後退し、値がさのハイテク株を中心に買いが優勢となりました。米株価指数先物が堅調に推移したことも追い風となりました。取引終了後に注目度の高い日本電産やディスコの決算発表を控えていることもあり、午後は様子見ムードが強まりました。日経平均は3日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にあり、25日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
総合乖離率は+0.0%とプラスに転換し、200日線との乖離率は-2.0%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素のうち2つがプラスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200線の下にありますが、9日線を上回りました。
NYDowは、9日線と25日線の上にあり、200日線を上回りました。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+6.4ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が1760円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの差は-2.4ポイントで、日経平均が660円ほど割安であることを示しています。
日経VIは21.47、VIXは20.32と、日米市場のボラティリティーはやや下落しました。両指数とも節目の20を上回っており、投資家の不安心理は依然として高い状態です。日経平均のNYDowに対する弱さは、前日より改善されました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.3、米国-2.2と日本が5.1ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.96ポイント(日経平均換算で9710円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP確定値は前期比年率6.9%増で、改定値の7.0%増から小幅に下方修正されました。また、10~12月期の米企業の決算は、好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
4月のニューヨーク連銀製造業景況指数、3月の鉱工業生産指数、4月のミシガン大学消費者信頼感指数、3月の消費者物価指数、3月のシカゴ購買部協会景気指数、3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は上回りました。また、2月の製造業受注は市場予想と一致しました。一方、3月の小売売上高、3月のISM非製造業景況指数、3月のISM製造業景況指数、2月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は8勝4負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが速まるという面では弱気気材料です。
米国の3月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比43.1万人増で、市場予想の46.0万人増をやや下回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.8%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが速まるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
3月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、3月の中古住宅販売件数、4月の住宅市場指数、2月の中古住宅販売仮契約指数、2月の新築住宅販売件数は市場予想を下回りました。1月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.1%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが遅くなるという面では強気気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、4月13日 1.0442% → 4月14日 1.0627% → 4月19日 1.0982%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.28、PBRが1.24となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.3%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。一方、今期予想利益の伸率は+28.8%で、こちらは3か月前より6.8ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-4.3%となり、日経平均の割安幅は1540円から1220円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1540円から-940円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.69ポイントから2.63ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策の為、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
4月21日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、G7財務相・中央銀行総裁会議のほか、ユニオン・パシフィックやフィリップ・モリスなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、ほぼ想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインとほぼ一致し、下値は想定ラインを420円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ(現在27910円近辺)が上値の目安に、25日線-200円(現在27170円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を3日連続で下回り、信用の売り圧力は弱まりました。日経VIは20を上回っており、投資家の不安心理は依然として高い状態です。日経平均は、ボリンジャーバンド+2σを目指す動きが期待できそうです。
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