[市況]
4月11日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。4月12日の日経平均先物は、前日比190円安で寄付くと、午前中は140円安から420円安と下落幅を拡げ、午後は350円安から560円安と下落幅を拡げて、結局500円安で取引を終えました。日経平均の終値は486円安の26334円で、出来高は11.76億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。
一方、空売り比率は、5日平均を2日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや弱まりました。
4月11日の米国市場では、ハイテク株を中心に売りが優勢となりました。インフレ抑制のためにFRBが金融引き締めペースを速めるとの観測から長期金利が上昇し、高PER銘柄の相対的な割高感が意識されました。上海で実施されている都市封鎖の長期化を嫌気した売りも出ました。NYDowは3営業日ぶりに反落し、NASDAQは続落しました。
4月12日の日本市場では、米長期金利の上昇を背景に前日の米株式市場で主要な株価指数がそろって下落した流れが引き継がれ、幅広い銘柄に売りが膨らみました。中国経済の減速や物価高などへの警戒感も投資家心理の重石となりました。米消費者物価指数(CPI)の発表を前に投資家の様子見姿勢が強まり、買い手が少なかったという面もあったようです。日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の下にあり、25日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-12.1%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-6.5%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下に出ました。3つの要素すべてがマイナスとなり、中期トレンドも黄信号から赤信号に変わりました。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200線の下にあります。
NYDowは、9日線と200日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の中に入りました。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+2.5ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が660円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの差は-4.4ポイントで、日経平均が1160円ほど割安であることを示しています。
日経VIは22.96、VIXは24.37と、日米市場のボラティリティーは上昇しました。日経平均のNYDowに対する弱さは、前日より拡大しました。両指数とも節目の20を上回っており、投資家の不安心理は依然として高い状態です。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.7、米国-2.2と日本が5.5ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より2.38ポイント(日経平均換算で11380円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP値は前期比年率6.9%増で、改定値の7.0%増から小幅に下方修正されました。また、10~12月期の米企業の決算は、好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
3月のシカゴ購買部協会景気指数、3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は上回りました。また、2月の製造業受注、2月の鉱工業生産指数、2月の小売売上高、2月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、3月のISM非製造業景況指数、3月のISM製造業景況指数、3月のミシガン大学消費者信頼感指数、2月の耐久財受注、3月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが速まるという面では弱気気材料です。
米国の3月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比43.1万人増で、市場予想の46.0万人増をやや下回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.8%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが速まるという面では弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
2月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、2月の中古住宅販売仮契約指数、2月の新築住宅販売件数、2月の中古住宅販売件数、3月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。1月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.1%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが遅くなるという面では強気気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、4月6日 0.9864% → 4月7日 0.9888% → 4月8日 1.0107%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%がここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.66、PBRが1.18となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.3%となり、これは3か月前より0.2ポイント改善されています。一方、今期予想利益の伸率は+29.6%で、こちらは3か月前より5.5ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-5.5%となり、日経平均の割安幅は1340円から1540円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1540円から-650円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、2.53ポイントから2.59ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化していますが、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
4月12日の米国市場では、3月の消費者物価指数などが注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油価格、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを480円ほど下回り、下値は想定ラインを250円ほど下回りました。目先は、25日線-200円(現在26660円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+200円(現在25920円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を2日連続で下回り、信用の売り圧力はやや弱まりました。VIXは、節目の20を上回っており、投資家の不安心理は依然として高い状態です。日経平均は、目先は下落が予想されますが、RSIが21%となるなど、テクニカル指標は反転を期待できる領域に入ってきました。
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