[市況]
12月17日、NYDowとNASDAQは下落しました。12月20日の日経平均先物は、前日比220円安で寄り付くと、午前中は140円安から600円安と下落幅を拡げ、午後は520円安から690円安の間でもみあって、結局620円安で取引を終えました。日経平均の終値は607円安の27937円で、出来高は11.42億株と比較的高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を2日連続で上回り、個別銘柄への売り圧力がさらに強まりました。
12月17日の米国市場では、世界中の主要中銀が金融政策の正常化を進める方針に舵を切ったことから、株式市場に資金が流入しにくくなるとの観測が強まり、売りが優勢となりました。オミクロン株を理由とした行動規制強化への警戒感もあり、景気敏感株への売りが目立ちました。一方で、ハイテク株の一角には押し目買いが入りました。結局、NYDowは続落し、NASDAQも小幅に続落しました。
12月20日の日本市場では、世界的な金融正常化の動きを背景に前週末の米株式市場が下落した流れが引き継がれ、売りが先行しました。取引時間中、中国人民銀行は1年8か月ぶりに利下げを発表しましたが、市場には「利下げに追い込まれた」と受け止められ、中国景気への警戒感が売りに拍車をかける形となりました。日経平均は大幅に続落し、心理的な節目の2万8000円を終値で下回りました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-10.0%と前週末よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-3.1%と前週末よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線を下回りました。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より1.9ポイント拡大して-7.3となり、中長期的には日経平均が2040円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が5.2ポイント(日経平均換算で1450円)割安となっています。
日経VIは24.50、VIXは21.57となり、日本市場のほうがボラティリティーが高い状態となりました。両指数とも20を上回っており、投資家の不安心理が高まっていることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.4、米国-3.2と日本が4.2ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.15ポイント(日経平均換算で5090円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP改定値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.0%増から小幅に上方修正されました。また、7~9月期の米企業の決算は、概ね好調でした。
経済指標を見てみます。
12月のニューヨーク連銀製造業景況指数、11月の消費者物価指数、11月のISM非製造業景況指数、10月の製造業受注、11月のISM製造業景況指数、11月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、11月の鉱工業生産指数、11月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、11月の小売売上高、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標は6勝6負で、景気・金利の両面から見て中立材料です。
米国の11月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比21.0万人増で、市場予想の52.5万人増を下回りました。一方、失業率は4.2%で、先月の4.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
11月の住宅着工件数、12月の住宅市場指数、10月の中古住宅販売仮契約指数、10月の中古住宅販売件数は予想を上回りました。一方、10月の新築住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早くなるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末まで1兆8500億ユーロ」に拡大しましたが、22年4月以降の資産購入額は現在の半分以下に減少する見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では12月15日 0.2156 → 12月16日 0.2136 → 12月17日 0.2126と上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.5、PBRが1.22なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+34.6%で、こちらは3か月前より0.7ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.3%となり、日経平均の割安幅は540円から660円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-660円から-250円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.38ポイントから1.34ポイントに縮小しました。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
12月20日の米国では、重要な経済指標の発表は予定されていません。マイクロン・テクノロジーやナイキの四半期決算などが注目されるでしょう。引き続き、オミクロン株に対する警戒感や、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを430円ほど下回り、下値は想定ラインを290円ほど下回りました。目先はボリンジャーバンド-1σ+200円(現在28280円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+300円(現在27700円近辺)が下値の目安になりそうです。
12月3日につけた安値の27589円を下回る動きとなるかどうかが、今後を占う重要なポイントとなりそうです。
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