[市況]
12月14日、NYDowとNASDAQは下落しました。12月15日の日経平均先物は、前日比90円安で寄り付くと、午前中は100円安から120円高の間でもみあい、午後は0円高から130円高と上昇幅を拡げて、結局130円高で取引を終えました。日経平均の終値は27円高の28459円で、出来高は9.90億株と比較的高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
また、空売り比率は5日平均を下回り、個別銘柄への売り圧力は弱まりました。
12月14日の米国市場では、11月の卸売物価指数の上昇率が市場予想を上回ったことから、FRBが利上げを前倒しするとの観測が広がり、ハイテク株を中心に売りが優勢となりました。FOMCの結果発表を15日に控え、投資家の慎重姿勢は強まっており、買い戻しの動きは限定的でした。NYDowとNASDAQは続落しました。
12月15日の日本市場では、前日の米ハイテク株安を受け、半導体関連株などが売られ、相場の重石となりました。一方で、米国株などと比較した際の日本株の割安感が意識され、主力銘柄の一角には押し目買いが入りました。FOMCの結果発表を間近に控え、午後は投資家の様子見姿勢が強まりました。結局、日経平均は小幅に反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にありますが、9日線の上にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は-4.9%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-1.4%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドには赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中に入りました。NASDAQは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の中に入りました。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドも青信号から黄信号に変わりました。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より1.4ポイント縮小して-6.3となり、中長期的には日経平均が1790円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が4.2ポイント(日経平均換算で1200円)割安となっています。
日経VIは20.27、VIXは21.89となり、米国市場のほうがややボラティリティーが高い状態となりました。両指数とも20を上回っており、投資家の不安心理が高まっていることを示しています。米国市場と比較して、日本市場の弱さは改善されました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.3、米国-3.1と日本が4.2ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.10ポイント(日経平均換算で5050円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP改定値は前期比年率2.1%増で、速報値の2.0%増から小幅に上方修正されました。また、7~9月期の米企業の決算は、概ね好調でした。
経済指標を見てみます。
11月のISM非製造業景況指数、10月の製造業受注、11月のISM製造業景況指数、11月のミシガン大学消費者信頼感指数、10月の小売売上高、10月の鉱工業生産指数、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数、10月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。一方、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数、10月の耐久財受注、10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は8勝4負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面では弱気材料です。
米国の11月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比21.0万人増で、市場予想の52.5万人増を下回りました。一方、失業率は4.2%で、先月の4.6%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
10月の中古住宅販売仮契約指数、9月の中古住宅販売件数、11月の住宅市場指数は予想を上回りました。一方、10月の新築住宅販売件数、10月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+19.1%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面から見て中立材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ただ、11月のFOMCでテーパリング実施を決定するようです。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では12月9日 0.2008 → 12月10日 0.1982 → 12月13日 0.2027と上昇傾向にあり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.7、PBRが1.24なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+34.9%で、こちらは3か月前より0.2ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.3%となり、日経平均の割安幅は580円から380円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-640円から-330円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.38ポイントから1.39ポイントに拡大し、ドル円相場はやや円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年9月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している債券購入の減額を決定しました。今後3か月間のペースを、これまでの2四半期より適度に低くするとしています。
12月15日の米国市場では、FOMCの結果公表およびパウエルFRB議長の会見のほか、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数や、11月の小売売上高、12月の住宅市場指数などが注目されるでしょう。引き続き、オミクロン株に対する警戒感や、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを240円ほど下回り、下値は想定ラインを280円ほど上回りました。目先は、25日線-100円(現在28770円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在28180円近辺)が下値の目安になりそうです。
早期に200日線(29000円近辺)を超えないようであれば、数か月低迷の覚悟も必要となりそうです。
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