[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、世界の主要中銀が金融政策の正常化を進める方針を相次いで示したことで、株式市場に資金が流入しにくくなるとの見方から、株価指数は下落しました。
週間変動率 NYダウ:-1.68%, NASAQ:-2.95%, S&P500:-1.94%
一方、中長期的には、エネルギー・コスト、生産・供給コスト上昇によるインフレ加速懸念と、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、サプライチェーン混乱などによる世界経済の減速懸念もあります。このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東、ウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2023年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.04ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが22.1に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.7との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.04ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが16.0程度になるか、又は、日経平均が33270円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は4730円ほど割安です。
ファンダメンタルで見れば、日本市場は4730円分魅力に欠ける状態であるとも言えます。
先週と比べて、割安幅は縮小しました。米国の長期金利の低下が主な要因です。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大と一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+1.8%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。NYDowが200日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.1%となりました。3ヶ月前に比べて同水準です。また、利益伸び率は+34.6%で3ヶ月前に比べて0.2ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利が低下し、日米間の金利差は1.44から1.36と縮小したものの、ドル円は113円から114円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+0.70%上昇しました。
④ OECDの日米の2023年の名目GDP伸び率予測が公開されて、日本が+1.8%で、米国は+4.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.1ポイント劣ります。
⑤ 12月第2週は売り越しで、12月第3週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に5.3ポイント(日経平均に勘算すると1510円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に3.2ポイント(日経平均に勘算する910円程度)割安です。
週間では、日本市場の弱さが改善されました。主要国の中央銀行による金融政策の変更結果を懸念した米国市場のボラティリティーの高まりが原因です。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-4.0%となり先週と比較してマイナス幅は縮小しました。200日移動平均線との乖離率は-1.1%で、マイナス幅は縮小しました。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドには、"赤信号"が点灯しています。
日経平均は、25日線と9日線の下にあります。短期トレンドには、"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の中に在ります。Nasdaqは、200日線の上にありますが、25日線と9日線の下にあります。一目均衡表の雲の中に在ります。
短期的には”赤信号”で、中期的には”黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては米国政府による大規模の経済対策があげられます。また、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債と12兆円までのETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府による経済対策があります。さらに、EUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の継続などが揚げられます。ただ、ECBとFRBは債券購入の減額を決め、利上げ時期を探っています。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は113円台から114円台が想定されます。
今週は、クリスマス休暇に入るため市場の活動は低下すると予想されます。主な経済指標としては、米国、英国の第3四半期GDPの更新、米国の耐久財受注と個人所得・支出、EUと英国の消費者信頼感指数、日本のインフレ率などがあります。中国の中央銀行は、金融政策を決定する予定です。
今週は、12月3日に付けた直近の安値27589円を下回るか否かを試される週となりそうです。
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