[市況]
1月28日、NYDowとNASDAQは上昇しました。1月29日の日経平均先物は、前日比250円高で寄り付くと、午前中は300円高から20円高と上昇幅を縮め、午後は70円高から480円安と下落に転じて、結局480円安で取引を終えました。日経平均の終値は534円安の27663円で、出来高は15.76億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
1月28日の米国市場では、買いが優勢となりました。過熱していた個人投資家の投機的売買を制限する動きが広がり、異常な値動きへの警戒感が後退しました。NYDowは前日に633ドル安と今年最大の下げ幅をつけており、自律反発狙いの買いも入りやすい地合いでした。NYDowとNASDAQは反発しました。
1月29日の日本市場では、前日の株安の反動で、自律反発狙いの買いが先行しました。しかし、米新興ネット証券のロビンフッドが「急騰した銘柄などへの取引制限を29日に緩和する」と発表すると、変動率の高い相場が続くとの警戒感が高まり、投資家の運用リスクをとる姿勢が後退しました。米株価指数先物の下落も重石となり、日経平均は結局、大幅に続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は9日線の下にあり、25日線を下回りました。短期トレンドは黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は+22.5%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+17.4%と前日よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-2.7とマイナスに転換し、中長期的には日経平均がNASDAQより750円ほど割安であることを示しています。一方、日経平均とNYDowとの比較は、日本市場が6.7ポイント(日経平均換算で1850円)割高であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-3.9、米国-3.2と日本が0.7ポイント割安ですが、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(日本が+2.3、米国が+3.2)は0.9ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.17ポイント(日経平均換算で1140円)割高となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP速報値は前期比年率4.0%増で、前期の33.4%増から市場予想以上に鈍化しました。また、10~12月期の米企業の決算は、まちまちな内容です。
経済指標を見てみます。
1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月の鉱工業生産指数、12月のISM非製造業景況指数、11月の製造業受注、12月のISM製造業景況指数、12月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を上回りました。一方、12月の耐久財受注、1月のミシガン大学消費者信頼感指数、11月の小売売上高、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝5負で、景気面ではやや強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面ではやや弱気材料です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比14万人減で、減少幅は市場予想の10万人減を上回りました。一方、失業率は6.7%で、先月の6.7%から横ばいでした。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しやすいという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の中古住宅販売件数、12月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、12月の新築住宅販売件数、12月の住宅市場指数、11月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を下回りました。11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+9.1%で、市場予想の+8.1%を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金融緩和の両面で中立材料です。
新型コロナウイルスの蔓延による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。にもかかわらず、長期金利の下降傾向が今後も続きそうなことは気がかりです。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ8か月は低下しています。直近は、1月25日 0.2128 → 1月26日 0.2185 → 1月27日 0.2115と落ち着いており、金融不安の気配は見られません。2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが25.2、PBRが1.21となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは4.8%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-19.8%で、こちらは3か月前より0.8ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず大幅に下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.8%となり、日経平均は330円の割高から520円の割安に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-520円から+720円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、0.97ポイントから1.00ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。国有企業や地方政府の不良債権問題の深刻化も経済成長の足かせになりつつあり、注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドル安が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続しています。
1月29日の米国市場では、12月の中古住宅販売仮契約指数のほか、キャタピラー、ハネウェル、イーライリリー、シェブロンなどの決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルス感染拡大への対応や新政権の経済対策も株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを120円ほど下回り、下値は想定ラインを260円ほど下回りました。目先は、25日線(現在27890円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ+100円(現在27250円近辺)が下値の目安になりそうです。
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