[市況]
1月11日、NYDowとNASDAQは下落しました。1月12日の日経平均先物は、前日比40円安で寄り付くと、午前中は200円安から130円高の間でもみあい、午後は80円安から110高の間でもみあって、結局50円高で取引を終えました。日経平均の終値は25円高の28164円で、出来高は13.35億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては「買い」が有利の状態です。
1月11日の米国市場では、主要な株価指数が前週末までに連日で過去最高値を更新していたこともあり、短期的な過熱感が意識され、主力ハイテク株を中心に利益確定の売りが優勢となりました。また、トランプ大統領の罷免や弾劾をめぐって政治が混乱するとの見方も投資家心理の重石となりました。NYDowは5営業日ぶりに、NASDAQは3営業日ぶりに反落しました。
1月12日の日本市場では、前日の米株安を受けて売りが先行しましたが、売り一巡後は米株価指数先物の上昇が好感され、買いの勢いが増しました。その後は、高値警戒感からの利益確定売りと先高観からの押し目買いが交錯しました。日経平均は小幅に続伸し、およそ30年5か月ぶりの高値を更新しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+39.2%と前週末よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+23.1%と前週末よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドにも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より0.7ポイント拡大して+2.2となり、中長期的には日経平均がNASDAQより620円ほど割高であることを示しています。また、日経平均とNYDowとの比較は、日本市場が8.9ポイント(日経平均換算で2510円)割高であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-3.8、米国-2.8と日本が1.0ポイント割安ですが、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(日本が+2.3、米国が+3.2)は0.9ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.16ポイント(日経平均換算で1230円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP確定値は前期比年率33.4%増で、改定値の33.1%増から上方修正されました。また、7~9月期の米企業の決算は、大方の予想に反して堅調な内容です。
経済指標を見てみます。
12月のISM非製造業景況指数、11月の製造業受注、12月のISM製造業景況指数、12月のシカゴ購買部協会景気指数、11月の耐久財受注、11月の鉱工業生産指数、12月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を上回りました。一方、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、11月の小売売上高、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝4負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比14万人減で、市場予想の10万人減を下回りました。一方、失業率は6.7%で、先月の6.7%から変わりませんでした。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しやすいという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
11月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、11月の中古住宅販売仮契約指数、11月の新築住宅販売件数、11月の中古住宅販売件数、11月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。10月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+7.9%で、市場予想の+6.9%を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しやすいという面では強気材料です。
新型コロナウイルスの蔓延による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。にもかかわらず、長期金利の下降傾向が今後も続きそうなことは気がかりです。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ8か月は低下しています。直近では、1月6日 0.2340 → 1月7日 0.2247 → 1月8日 0.2243と落ち着きつつあり、金融不安の気配は後退しました。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが26.0、PBRが1.24となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは4.8%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-20.1%で、こちらは3か月前より1.2ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.5%となり、日経平均の割高幅は450円から390円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+150円から+450円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.07ポイントから1.12ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。国有企業や地方政府の不良債権問題の深刻化も経済成長の足かせになりつつあり、注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドル安が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続しています。
1月12日の米国市場では、12月の消費者物価指数などが注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルス感染拡大への対応も株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、ほぼ想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを40円ほど上回り、下値は想定ラインを10円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ+300円(現在28190円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+2σ-200円(現在27690円近辺)が下値の目安になりそうです。
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