[市況]
1月27日、NYDowとNASDAQは大幅下落しました。1月28日の日経平均先物は、前日比600円安で寄り付くと、午前中は770円安から300円安と下落幅を縮め、午後は340円安から590円安と下落幅を拡げて、結局590円安で取引を終えました。日経平均の終値は437円安の28197円で、出来高は21.38億株と高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
1月27日の米国市場では、航空機のボーイングや半導体のAMDなど、決算発表が嫌気された銘柄が売られました。また、一部銘柄に対する個人投資家の投機的な動きでヘッジファンドが大規模な損失を計上したとの報道も市場心理を冷やし、売りをさそいました。NYDowは5日続落し、NASDAQも続落しました。
1月28日の日本市場では、前日の急激な米株安を受け、過熱感のあったハイテク株を中心とした幅広い銘柄が売られました。日経平均は一時、節目の2万8000円を割り込みましたが、全体の過熱感が薄れると押し目買いも入り、一方的に下値を探る展開とはなりませんでした。もっとも、今晩の米国株の動向に対する警戒感も強く、午後には再び売りの勢いが増す場面もありました。日経平均は大幅に反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線の上にありますが、9日線を下回りました。短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は+29.4%と前日よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+20.0%と前日よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線を下回りました。
NYDowは、200日線の上にありますが、9日線の下にあり、25日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、25日線と200日線の上にありますが、9日線を下回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+0.3とプラスに転換し、中長期的には日経平均がNASDAQより80円ほど割高であることを示しています。また、日経平均とNYDowとの比較は、日本市場が10.2ポイント(日経平均換算で2880円)割高であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-3.9、米国-3.3と日本が0.6ポイント割安ですが、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(日本が+2.3、米国が+3.2)は0.9ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.27ポイント(日経平均換算で1830円)割高となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP確定値は前期比年率33.4%増で、改定値の33.1%増から上方修正されました。また、7~9月期の米企業の決算は、大方の予想に反して堅調な内容です。
経済指標を見てみます。
1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、12月の鉱工業生産指数、12月のISM非製造業景況指数、11月の製造業受注、12月のISM製造業景況指数、12月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を上回りました。一方、12月の耐久財受注、1月のミシガン大学消費者信頼感指数、11月の小売売上高、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数、12月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝5負で、景気面ではやや強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面ではやや弱気材料です。
米国の12月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比14万人減で、減少幅は市場予想の10万人減を上回りました。一方、失業率は6.7%で、先月の6.7%から横ばいでした。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しやすいという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
12月の中古住宅販売件数、12月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、12月の住宅市場指数、11月の中古住宅販売仮契約指数、11月の新築住宅販売件数は市場予想を下回りました。11月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+9.1%で、市場予想の+8.1%を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金融緩和の両面で中立材料です。
新型コロナウイルスの蔓延による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。にもかかわらず、長期金利の下降傾向が今後も続きそうなことは気がかりです。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ8か月は低下しています。直近は、1月22日 0.2152 → 1月25日 0.2128 → 1月26日 0.2185と落ち着いており、金融不安の気配は見られません。2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが25.6、PBRが1.23となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは4.8%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-19.7%で、こちらは3か月前より1.1ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.2%となり、日経平均の割高幅は520円から330円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+330円から+720円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.00ポイントから0.97ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均も、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。国有企業や地方政府の不良債権問題の深刻化も経済成長の足かせになりつつあり、注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドル安が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続しています。
1月28日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、10~12月期のGDP速報値、12月の新築住宅販売件数のほか、マクドナルド、ビザ、マスターカード、ウエスタン・デジタルなどの決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルス感染拡大への対応や新政権の経済対策も株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを480円ほど下回り、下値は想定ラインを370円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ-200円(現在28440円近辺)が上値の目安に、25日線(現在27840円近辺)が下値の目安になりそうです。
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