[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、欧州債務問題や金融システムに対する懸念がやや後退し、上昇しました。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念、資源高騰に伴う新興国の利上げによる景気後退懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2011年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差はOECDの予測値の改定により、日本市場は2.89ポイント割高となりました。その要因はS&P500のPERが13.0で、東証1部平均のPERの13.8との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格には、震災の影響で日本の2011年のGDP予想値が2.0%程度になる(又は、日米のGDP伸び率差がOECD予想値より2.9ポイント縮まる)ことが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在-0.9%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
① 先週のNYDowは11000ドル近辺で持ちこたえ、週足は陽線となりました。今週は、住宅関連指標、FOMC後の声明、G20財務相・中央銀行総裁会議などが株式相場に影響しそうですが、9月1日の高値11717ドルを上回れるか否かが今後を占う上でカギとなりそうです。
② 日経225採用銘柄の今期予想増益率は+17%ですが、今期ROE予想値は7.9%から7.4%へやや悪化しています。
③ 日米とも長期金利は下降傾向で、日米の金利差は0.93%から1.05%へやや拡大し、為替は77円から76円台で推移しました。今週も円高圧力が強い中、介入警戒感も強く76円台から77円台でもみ合う動きとなりそうです。
④ OECDによる日米の2011年の実質GDP伸び率は改定され日本が-0.9%で、米国は+2.6%と予想されていますので、この面では日本市場にとって3.5ポイント分の弱気材料です。
⑤ 9月2週は売り越しで9月3週も売り越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち①が強気材料でした。今週も、①③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、6.5ポイント割安となりました。先週比4.3ポイント割安幅は拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。200日移動平均線乖離率は-9.7%となり先週と比較してマイナス幅が縮小しました。総合乖離率は-14.6%となりマイナス幅が縮小しました。3つがマイナスですので中期トレンドは、”赤信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の上に在りますので、短期的トレンドには"青信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線の下に在りますが、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の下に在ります。Nasdaqは、200日線の下に在りますが、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の下に在ります。短期的には青信号"で中期的には"赤信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場は、アフリカ・中東政情不安、資源高、新興国の利上などのリスクはやや後退しているものの、不動産市場の低迷、雇用指標の停滞、世界景気後退懸念、欧州の政府債務問題が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が2013年まで継続する見通しの中、企業決算は概ね好調である点が挙げられます。テクニカルな面を見ると、米国市場は中期下降トレンドで、短期は上昇トレンドとなっています。日本市場も中期下降トレンドで、短期は上昇トレンドとなっています。
目先の状況を分析すると、EUの政府債務問題についてはLIBORのドル3ヶ月物金利は上昇ピッチを上げており要警戒域に入りました。一方、先週の日米金利差はやや拡大したものの、為替は引き続き円高圧力が強い状況です。中期的な下落リスクは払しょく出来ていません。
先週のNYDowは11000ドル近辺で持ちこたえ、欧州債務問題や金融システムに対する懸念がやや後退し、短期上昇トレンドとなりました。市場は今週開催のFOMCの金融緩和策を期待する動きも期待できますので、9月1日の高値11717ドルを上回れるか否かが今後を占う上でカギとなりそうです。
今週の日経平均も、米国市場や為替などを睨んだ動きとなりそうです。今週は3日間の取引となる中、FOMCや、G20財務相・中央銀行総裁会議、IMF・世銀年次総会など欧州債務問題に前向きなニュースが出やすい週となりそうですので、目先は上昇トレンドが維持されそうです。期待を裏切るニュースが出ない限り、一目均衡表の雲の下限(9130円近辺)を目指す動きとなりそうです。
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