[市況]
7日のNYDowとNASDAQは大幅上昇しました。8日の日経平均先物は、前日比80円高で寄り付き、午前中は100円高から30円高の範囲で徐々に下げる動きでした。午後は、一時30円安まで売られる場面がありましたが、最終的に10円高で取引を終わりました。日経平均は29円高で引け、出来高は14.63億株と低水準でした。寄り付き前の外国人の売買注文は、170万株の買い越しで、高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅が拡大しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利な状況です。
7日の米国市場では、ドイツの連邦憲法裁判所が過去に決めたギリシャ向けの金融支援は違憲だとする訴えを退けたことで、欧州の株式市場が上昇し、買いが先行しました。また、経営陣の一部交代を発表したバンク・オブ・アメリカが大幅に上昇したことが、金融株の上昇に繋がったことも支援材料となりました。
8日の日本市場では、米国市場が急伸したことを受け、寄り付き直後は上げ幅を100円超まで拡大しましたが、その後は世界景気の先行き不透明感や、欧米の金融政策や景気対策を見極めたいとの様子見姿勢が強まり、次第に伸び悩みました。後場は小幅ながら下げに転じる場面もありました。
[テクニカル視点]
日経平均は25日線、9日線の下に在ります。短期トレンドは赤信号が点灯しています。総合乖離率は-19.0%でマイナス幅が縮まりました。200日線との乖離率は-10.7%でマイナス幅は縮まりました。日経平均は一目均衡表の雲の下に在ります。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドは赤信号が点灯しています。
また、ドル・ベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は200日線、25日線、9日線の下に在ります。
NYDowは200日線の下に在りますが、25日線、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の下に在ります。
NASDAQは200日線の下に在りますが、25日線、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の下に在ります。米国市場の短期トレンド赤信号から青信号に変わりました。中期トレンドは赤信号が点灯しています。
日米市場の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、日本市場が4.7ポイント割安(弱い動き)であることを示しています。日本市場は2.4ポイント割安幅を拡げました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、改定されたOECDの2011年予想実質GDP伸び率の日米差(3.5ポイント)と金利差、予想PERを考慮した結果、ファンダメンタル面では、日本市場が米国市場に比べ 2.78ポイント割高となっています。
市場は現在、「震災復興の日本経済への影響」、「世界の景気と金・穀物・原油価格の動き」、「米国の景気、雇用状況、住宅市況と追加金融緩和の行方」、「欧州の債務問題による金融不安の再燃」、「新興国の金融引き締めの影響」、「為替の動向」といった事柄を材料としているようです。米国の4-6月期のGDPは年率で1.0%増と速報値から下方修正されました。一方、4-6月期の主要企業の決算発表は、好調な企業が多いようです。経済指標では8月のISM非製造業景況指数、8月のISM製造業景況感指数、8月のシカゴ購買部協会景気指数、7月の製造業受注、7月の個人消費支出、7月の耐久財受注額、7月の鉱工業生産指数、7月の小売売上高などは市場予想を上回りましたが、8月のフィラデルフィア連銀景気指数がマイナス30.7と、2年5ケ月ぶりの水準まで悪化し、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は44.5と2年4ヶ月ぶりの水準に急低下し、8月のミシガン大学消費者態度指数、8月のNY連銀製造業景気指数は予想以下となりました。8月の雇用統計は、雇用者数の増加幅がゼロで横ばいと8万人以上を見込んでいた市場予想を大きく下回りました。失業率は9.1%と前月と同水準でした。一方、住宅関連では、6月の住宅価格指数、7月の住宅着工件数は予想以上でしたが、7月の新築住宅販売は3ヶ月連続で減少し、7月の中古住宅販売件数は予想以下となりました。6月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は主要20都市の指数が前年同月比で下落したものの、市場予想の範囲内でした。今年4-6月は景気指標に陰りがでており、7月に入り改善傾向だったものの、再び陰りが出てきました。特に、雇用と住宅関連の回復は鈍く金融緩和継続の主な原因となっています。
ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインなど欧州各国の国債の金利上昇が金融システム不安再燃の懸念を生んでいます。また、G20で2013年に財政赤字半減が宣言され、需要不足から世界景気の後退リスクが背景に有ることから、先進国の財政赤字に対する根本的な解決には時間が掛かりそうです。長期金利への影響や金融機関の業績悪化と投資家のリスク許容度の低下が、今後も懸念されます。このような環境の下で、FRBは景気認識を引き下げ、短期金利を2013年半ばまでは超低金利で維持することを表明しました。これは長期的な円高要因です。一方、中国を初めとする新興国の利上げが悪材料視されています。
金融不安の気配を知る上で、金融機関間の取引金利の推移に留意することが肝要です。ちなみに、指標となるLIBORドル3ヶ月物金利の推移は09月05日 0.3328% → 09月06日 0.3356% → 09月07日 0.3368%となり0.3%を超え上昇中です。欧州財政危機直前の昨年05月03日の0.346%は下回っています。MAXは昨年6月17日の0.539%でした。
一方、日経平均採用銘柄全体では、予想PERが13.0、PBRが0.96、ROEが7.4%となっています。PBRが1.0以下ですので長期的には買い場と思われます。
[今後の見通し]
日経平均は、NYDowの上昇率ほどは上げませんでした。その結果、NYDowに対する日経平均のプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.2%となり、日経平均は290円の割安で、割安幅が縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-330円 ~ -60円の間で推移しています。日本市場は、ドル・ベースでは米国市場に比べて弱い動きが続いていますが、今日は弱い動きが加速しました。
日経平均を中長期的に米国市場と比較すると、テクニカルには割安で、ファンダメンタルには割高です。
日経平均は、ここからも、米国市場をにらみながら、為替の動向が鍵となりそうです。為替面では日米金利差の推移が引き続き重要ですが、今日の長期金利差は1.03%に拡大したものの、為替はもみ合いでした。日米金利差はこのところ縮小傾向で円高圧力となっています。
テクニカルには、米国市場は、中期下降トレンドで、短期は上昇トレンドに復帰しました。一方、日経平均は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドです。
ファンダメンタル面では、EUの政府債務問題が欧米の銀行の不良債権となり金融危機が再来するか否か、世界の景気後退が米国の主要企業の業績に影響するか否かが今後のテーマとなりそうですが、欧州債務問題はくすぶったままで、LIBOR銀行間金利は上昇が続いており、欧州財政問題が金融不安に発展する要警戒域に入りました。また、米国債の格下げや経済指標の陰りが相場の足を引っ張る原因となっています。このような、相場環境の中、今夜の米国市場は新規失業保険申請件数、7月の貿易収支、バーナンFEB議長の発言、オバマ大統領の演説内容が注目されそうです。
日経平均先物は8910円には接近したものの25日線に押し戻され窓埋めとはなりませんでしたので、目先の上値の目安は、引き続き9月5日に空けた窓の窓埋となる8910円近辺で、下値の目安は上昇中のボリンジャーバンドの-2σ(現在8556円)近辺と思われます。
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