[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、中東の地政学リスクへの過度な警戒が和らいだことや、主要ハイテク企業の四半期決算が市場予想を上回ったことで、投資家心理が改善して、株価指数は週間では上昇しました。
週間変動率 NYダウ:+0.67%,
NASDAQ:+4.23%, S&P500:+2.67%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、2025年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.50ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが20.8に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの16.6との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.50ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが65.3程度になるか、又は、日経平均が149,370円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は111,440円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、111,440円ほど魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは拡大しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の下に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。今週は、NYダウが25日線の上に戻れるか否かに注目。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+9.1%となりました。3ヶ月前に比べて0.3ポイント改善しました。また、利益伸び率は+12.5%となりました。3ヶ月前に比べて+3.5%ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は3.78から3.78と変わらなかったものの、ドル円は154円台から158円台と円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.02%下落しました。
④ OECDの日米の2025年の名目GDP伸び率は、日本が+3.4%で、米国は+3.9%と予想されていますので、この面では日本市場の方が0.5ポイント劣ります。
⑤ 4月第3週は売り越しで、4月第4週は売り越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に0.8ポイント(日経平均に勘算すると300円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に4.4ポイント(日経平均に勘算する1670円程度)割高です。
日本市場はNYダウに対しては強く、NASDAQとは同水準です。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で
15.0 と低下しました。 日経 VI は 週間で 20.8と低下しました。米国市場はやや楽観的で日本市場はまだ悲観的です。
日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには"黄信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の中に在ります。日経平均の総合乖離率は+5.9%で、200日移動平均線との乖離率は+9.5%でした。2つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"黄信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。また、一目均衡表の雲の下に在ります。
NASDAQも、9日線と200日線の上にありますが、25日線の下にあります。また、一目均衡表の雲の中に在ります。
短期的には"黄信号”で、中期的には"黄信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると目先、世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期は下降トレンド。
日本市場は中期上昇トレンドで、短期は下降トレンドです。
為替市場を分析すると、2023年11月以来の150円台となっています。今週は158台から160台が想定されます。
今週の米国市場では、FRBの利上げ決定が注目され、次いで雇用統計も注目されます。また、投資家はISM製造業およびサービス業PMI、JOLTの求人情報、貿易統計、製造業受注、CB消費者信頼感指数も注目されます。決算シーズンは、主要企業の決算発表が頂点に達します。国際的には、ユーロ圏の4月のインフレ率や第1四半期GDP速報値が発表されます。また、中国の製造業PMIが発表されます。
先週の日経平均は、想定レンジを上振れしました。上値は想定ラインを190円ほど上回り、下値は想定ラインを540円ほど上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+1σ(現在40150円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-1σ(現在38050円近辺)の間での動きが想定されます。
今週は、FOMCと雇用統計の結果が、年内利下げ時期予想に与える影響を注視する必要がありますが、中東の地政学的リスクは落ち着きつつあり、日米市場とも、変動率は高そうですが、上昇基調となりそうです。
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