[市況]
10月11日、NYDowとNASADQは上昇しました。10月12日の日経平均先物は、前日比250円高で寄り付くと、午前中は230円高から500円高と上昇幅を拡げ、午後は450円高から760円高と上昇幅を拡げて、結局、740円高で取引を終了しました。日経平均の終値は558円高の32494円で、出来高は14.71億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
空売り比率は5日平均を5日連続で下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。
10月11日の米国市場では、9月の卸売物価指数(PPI)の伸びが前月比で鈍化したことから、前日に続いて長期金利が低下し、株買いをさそいました。ただ、12日に9月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えて買い手控えムードも強く、売りが優勢となる場面もありました。結局、NYDowとNASDAQは4日続伸しました。
10月12日の日本市場では、前日の米ハイテク株高を受け、半導体関連株を中心とした主力株が全面高となりました。足元の相場急伸を受けて売り方による損失確定とみられる買い戻しも加速し、指数を押し上げました。終日上値追いの展開となり、日経平均は大幅に3日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にあり、25日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変りました。
総合乖離率は+9.0%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+8.2%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の中に入りました。3つの要素のうち2つがプラスであり、中期トレンドには黄信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線の上にあり、25日線と200日線を上回りました。
NYDowは、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+0.7ポイントとプラスに転換し、日経平均は230円ほど割高の状態となりました。また、NYDowとの差は、+8.3ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均の割高幅は2700円に拡大しました。
日経VIは20.68と横ばいで、VIXは16.09と低下しました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を上回っています。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-5.7、米国0.7と日本が5.0ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.0、米国が+3.4)は0.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.52ポイント(日経平均換算で77340円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP確定値は前期比年率2.1%増で、改定値の2.1%増から変わりませんでした。また、4~6月期の米企業の決算は、おおむね好調です。
経済指標を見てみます。
8月の製造業受注、9月のISM製造業景況指数、9月のミシガン大学消費者信頼感指数、8月の耐久財受注、9月のニューヨーク連銀製造業景況指数、8月の鉱工業生産指数、8月の小売売上高、8月の消費者物価指数は市場予想を上回りました。また、9月のISM非製造業景況指数は市場予想と一致しました。一方、9月のシカゴ購買部協会景気指数、9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は9勝3負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
米国の9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比33.6万人増で、市場予想の16.6万人増を大きく上回りました。一方、失業率は3.8%で、前月の3.8%から横ばいでした。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
8月の中古住宅販売仮契約指数、8月の新築住宅販売件数数、8月の中古住宅販売件数、9月の住宅市場指数、8月の住宅着工件数は予想を下回りました。一方、7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比+0.1%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年内にまだ利上げをする可能性があると市場は予想しています。ECBは、6月の理事会で、8会合連続でインフレ抑制に向けた金融引き締めを示唆しました。一方、日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、長期金利の許容変動幅は、0.5%に据え置きつつも、1%までは柔軟に対応するという政策に変更されました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、10月6日 5.6683% → 10月9日 5.6683% → 10月10日 5.6873%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年10月10日に記録した5.6873%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが15.57、PBRが1.33となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.6%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は+2.6%で、こちらは3か月前より0.9ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+1.6%となり、日経平均は120円の割安から520円の割高に転換しました。プレミアム値は、ここ一週間、-720円から+520円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.88ポイントから3.80ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
10月12日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、9月の消費者物価指数のほか、デルタ航空などの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを190円ほど上回り、下値は想定ラインを480円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ-200円(現在32860円近辺)が上値の目安に、25日線-100円(現在32200円近辺)が下値の目安になりそうです。
日経VIは、日経平均の変動の大きさを反映して、20を上回って推移しています。また、信用の売り圧力は、かなり弱い状態です。日経平均は続伸し、25日線を上回りました。目先、より上昇する可能性が高まりました。
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