[市況]
5月29日、米国市場は休場でした。5月30日の日経平均先物は、前日比30円安で寄り付くと、午前中は90円高まで上昇したのち240円安まで下落し、午後は200円安から80円高とプラス圏に戻して、結局、80円高で取引を終了しました。日経平均の終値は94円高の31328円で、出来高は11.15億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態となりました。
空売り比率は5日平均を5日ぶりに下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、やや弱まりました。
5月29日の米国はメモリアルデーの祝日で、米国市場は休場でした。
5月30日の日本市場では、日経平均がバブル経済崩壊後の高値を連日で更新しているとあって、利益確定の売りが優勢となる時間帯が続きました。しかし、午後に入ると、海外勢が日本株の持ち高を増やす目的で株価指数先物に買いを入れ、現物株を押し上げました。結局、日経平均は4日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+28.2%とプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+12.7%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の上にあり、9日線を上回りました。
NYDowは、9日線と25日線の下にありますが、200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上あります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-0.5ポイントとマイナス幅を縮め、日経平均が160円ほど割安であることを示しています。一方、NYDowとの差は、+11.7ポイントとプラス幅を拡げ、日経平均が3670円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.84と低下し、VIXも17.46と低下しました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を下回りました。NYDowと比べて、日経平均は強い状態であり、前日比で強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-6.6、米国1.6と日本が5.0ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.5、米国が+3.5)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.89ポイント(日経平均換算で39390円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP改定値は前期比年率1.3%増で、速報値の1.1%増から上方修正されました。一方、1~3月期の米企業の決算は、おおむね好調です。
経済指標を見てみます。
4月の耐久財受注、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の鉱工業生産指数、4月のISM非製造業景況指数、3月の製造業受注、4月のISM製造業景況指数、4月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を上回りました。また、4月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、4月の小売売上高、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数、4月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は9勝3負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比25.3万人増で、市場予想の18.0万人増を上回りました。また、失業率は3.4%で、先月の3.5%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の新築住宅販売件数数、4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、4月の中古住宅販売仮契約指数、4月の中古住宅販売件数は予想を下回りました。2月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+0.4%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年5月まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、3月の理事会で3回連続となる0.5%の利上げを決定しました。また、6月にかけて保有資産を150億ユーロ規模で削減する方針です。日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。長期金利の許容変動幅も0.5%に据え置かれています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、5月24日 5.4244% → 5月25日 5.4631% → 5月26日 5.4757%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年5月26日に記録した5.4757%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが14.33、PBRが1.28となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は+2.2%で、こちらは3か月前より2.0ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
前日の米国市場は休場でしたが、きょうの日経平均は上昇しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+3.3%となり、日経平均の割高幅は1090円から1000円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+1000円から+1260円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.38ポイントから3.33ポイントに縮小しました。ドル円相場は円安水準でもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています。
5月30日の米国市場では、3月の住宅価格指数、3月のS&Pコアロジック/ケース・シラー住宅価格指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数のほか、ロウズなどの四半期決算が注目されるでしょう。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを130円ほど下回り、下値は想定ラインを140円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ-300円(現在31400円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ+200円(現在30920円近辺)が下値の目安になりそうです。
信用の売り圧力はやや弱まりましたが、個別銘柄は売り有利の状態です。日本市場のボラティリティーは低下し、過熱感が少しやわらいだことを示しています。日経平均だけが強い状態となっており、まだ上昇余地はありそうです。
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