日経平均の予想: [2023/05/31]今後の日経平均の見通し

Wednesday, May 31, 2023

[2023/05/31]今後の日経平均の見通し

[市況]

530日、NYDowは下落し、NASDAQは上昇しました。531日の日経平均先物は、前日比250円安で寄り付くと、午前中は240円安から460円安の間で上下し、午後は380円安から590円安と下落幅を拡げて、結局、530円安で取引を終了しました。日経平均の終値は440円安の30887円で、出来高は25.86億株と高水準でした。

高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態ですが、売られ過ぎの水準です。

空売り比率は5日平均を上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり強まりました。

 

530日の米国市場では、消費関連株や景気敏感株の一角が売られました。連邦政府の債務上限問題について、議会の承認を得られるまでは予断を許さない状況が続くとの慎重な見方がくすぶっており、投資家心理の重石となりました。一方、長期金利の低下を受け、相対的な割高感の薄れた高PERのハイテク株は買われました。結局、NYDowは反落し、NASDAQ3日続伸しました。

531日の日本市場では、高値警戒感が意識されるなか、外国為替市場で円相場が円高ドル安方向に推移したことや、日本と中国で生産活動の停滞を示す経済指標が相次いで発表されたことなどが重石となり、利益確定の売りが優勢となりました。日経平均は5日ぶりに反落しました。

 

[テクニカル視点]

日経平均は、25日線の上にありますが、9日線を下回りました。短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。

総合乖離率は+23.1%とプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+11.0%とプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。

ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の上にありますが、9日線を下回りました。

 

NYDowは、9日線と25日線の下にありますが、200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上あります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。

 

日経平均とNASDAQ200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-2.5ポイントとマイナス幅を拡げ、日経平均が770円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は、+10.1ポイントとプラス幅を縮め、日経平均が3120円ほど割高であることを示しています

 

日経VI20.00と上昇し、VIX17.46と前日比横ばいでした。日経VIは、不安心理の高まりを示す20に達しました。NYDowと比べて、日経平均は強い状態ですが、前日比で強さは縮小しました。

 

[ファンダメンタルの現状認識]

イールドスプレッドは、日本-6.7、米国1.7と日本が5.0ポイント割安ですが、OECD2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.5、米国が+3.5)1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.90ポイント(日経平均換算で37770円)割安となっています。

 

市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。

 

米国の13月期のGDP改定値は前期比年率1.3%増で、速報値の1.1%増から上方修正されました。一方、13月期の米企業の決算は、おおむね好調です。

 

経済指標を見てみます。

5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、4月の耐久財受注、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の鉱工業生産指数、4月のISM非製造業景況指数、3月の製造業受注、4月のISM製造業景況指数、4月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を上回りました。また、4月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、4月の小売売上高、5月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は102負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です

 

米国の4月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比25.3万人増で、市場予想の18.0万人増を上回りました。また、失業率は3.4%で、先月の3.5%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です

 

米国の住宅関連の指標を見てみます。

4月の新築住宅販売件数数、4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、4月の中古住宅販売仮契約指数、4月の中古住宅販売件数は予想を下回りました。3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市圏の価格指数)は前年同月比-1.1%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は42負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。

 

新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。

 

欧米日の金融政策をまとめてみます。

FRB20235月まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、3月の理事会で3回連続となる0.5%の利上げを決定しました。また、6月にかけて保有資産を150億ユーロ規模で削減する方針です。日銀は、植田新総裁の体制下でも、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。長期金利の許容変動幅も0.5%に据え置かれています。

 

金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、524 5.4244% 525 5.4631% 526 5.4757%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、202199日の0.1141%が直近の最低金利で、2023526日に記録した5.4757%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。


一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PER14.10PBR1.26となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROE9.0%となり、これは3か月前より0.1ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は+2.1%で、こちらは3か月前より2.3ポイント悪化しています。


[今後の見通し]

日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+2.4%となり、日経平均の割高幅は1000円から730円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+730円から+1260円の間で推移しています。

 

日米の長期金利の差は、3.33ポイントから3.23ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。

 

テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。

 

ファンダメンタル面も見てみましょう。

LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。欧米の金融機関の健全性が疑問視されています。

中国では、不動産価格の下落が続いています。不動産企業の破綻と地方政府の財政問題が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。

米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。

ECBもインフレ対策を重視して利上げを続けています

 

531日の米国市場では、4月のJOLTS求人件数やベージュブックのほか、セールスフォース・ドットコムなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。

 

きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを340円ほど下回り、下値は想定ラインを220円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+300円(現在31110円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-300円(現在30510円近辺)が下値の目安になりそうです。

 

信用の売り圧力はかなり強まり、個別銘柄は売られ過ぎの水準となりました。日本市場のボラティリティーは上昇し、不安感が高まっていることを示しています。きょうの日経平均は大幅に反落しました。急ピッチな上昇の反動で、目先は下落が続く可能性が高そうです。



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