[市況]
3月24日、NYDowとNASDAQは上昇しました。3月27日の日経平均先物は、前日比20円高で寄り付くと、午前中は90円高から90円安の間でもみあい、午後は10円高から110円高の間でもみあって、結局、90円高で取引を終了しました。日経平均の終値は91円高の27476円で、出来高は9.66億株と比較的高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態となりました。
空売り比率は、5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は弱まりました。
3月24日の米国市場では、ドイツ銀行など欧州主要銀行の急落を受けて売りが先行しましたが、セントルイス地区連銀のブラード総裁が「金融ストレスを抑えこめる確率は8割程度」との見方を示した、と伝わると、金融システム不安や景気悪化への過度な警戒感が和らぎ、ディフェンシブ株を中心に買いなおされる展開となりました。NYDowとNASDAQは続伸しました。
3月27日の日本市場では、内需株やディフェンシブ株を中心に買いが優勢となりました。前週末の米国市場の上昇や、3月期末の配当取りを狙った買いが支えとなりました。もっとも、欧米を中心とした金融システムをめぐる不安は根強く、持ち高を一方に傾ける動きは限定的でした。日経平均は3営業日ぶりに反発しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にありますが、25日線の下にあります。短期トレンドには黄信号が点灯しています。
総合乖離率は+0.9%とプラスに転換し、200日線との乖離率は+0.4%とプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスとなり、中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は-3.5ポイントで、日経平均が960円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの差は+0.9ポイントで、日経平均が250円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.05と低下し、VIXも21.74と低下しました。VIXは、不安心理の高まりを示す20を上回っています。NYDowと比較して、日経平均は強い状態であり、前週末比で強さは横ばいでした。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.5、米国-2.2と日本が5.3ポイント割安ですが、OECDの2024年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.5、米国が+3.5)は1.0ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より4.24ポイント(日経平均換算で32900円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP改定値は前期比年率2.7%増で、速報値の2.9%増から下方修正されました。一方、10~12月期の米企業の決算は、まちまちです。
経済指標を見てみます。
1月の製造業受注、2月のISM非製造業景況指数は市場予想を上回りました。また、2月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、3月のミシガン大学消費者信頼感指数、2月の鉱工業生産指数、3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数数、2月の小売売上高、3月のニューヨーク連銀製造業景況指数、2月のISM製造業景況指数、2月のシカゴ購買部協会景気指数、2月のコンファレンスボード消費者信頼感指、1月の耐久財受注は市場予想を下回りました。経済指標3勝9負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ圧力が弱まるという面では強気材料です。
米国の2月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比31.1万人増で、市場予想の20.0万人増を上回りました。一方、失業率は3.6%で、先月の3.4%から悪化しました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げが続くという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
2月の中古住宅販売件数、2月の住宅着工件数、3月の住宅市場指数、1月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、2月の新築住宅販売件数数は予想を下回りました。12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+4.6%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、利上げ圧力が強まるという面では弱気材料です。
新型コロナウイルス騒動に端を発する景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2023年5月まで利上げを継続すると予想されています。また、量的引き締めも加速しています。ECBは、12月に0.5%の利上げを実施しました。また、資産圧縮を2023年3月から開始する予定です。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。ただ、22年12月の金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.5%に拡大することを決めました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、今年に入り上昇を続けています。直近では、3月22日 5.0800% → 3月23日 5.1337% → 3月24日 5.1014%と、ここ5年の最高値圏で推移しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2023年3月9日に記録した5.1537%がここ5年間の最高金利です。米国債金利と比べ、金融不安を示唆するレベルまで上昇してきており、警戒が必要です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.84、PBRが1.15となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.0%となり、これは3か月前と同水準です。また、今期予想利益の伸率は+3.1%で、こちらは3か月前より3.4ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+3.1%となり、日経平均の割高幅は1080円から830円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+440円から+1080円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.13ポイントから3.12ポイントに縮小しましたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBは量的緩和政策を終了し、量的引き締めの検討を開始しています。
3月27日の株式市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、金融株や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを160円ほど下回り、下値は想定ラインを300円ほど上回りました。目先は、25日線+200円(現在27800円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ(現在27160円近辺)が下値の目安になりそうです。
信用の売り圧力は弱まり、日本市場の不安心理は後退しました。きょうの日経平均は反発しました。引き続き、25日線を越えられるかどうかが、次の注目点です。
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