[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、長期金利が上昇し、相対的な割高感が意識されやすい高PERのグロース株を中心に売りが優勢となり、株価指数は週間では下落しました。
週間変動率 NYダウ:-0.17% NASAQ:-2.41% S&P500:-1.11%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2024年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.51ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが18.6に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.0との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.51ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが31.5程度になるか、又は、日経平均が66990円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は39310円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、39310円分魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは拡大しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYダウが25日線の上に戻れるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.0となりました。3ヶ月前に比べて0.1ポイント悪化しています。また、利益伸び率は+3.7で3ヶ月前に比べて-2.5%ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は上昇し、日米間の金利差は3.04から3.24に拡大して、ドル円は131円から129円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で+0.57%上昇しました。
④ OECDの日米の2024年の名目GDP伸び率は、日本が+2.51%で、米国は+3.54%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.03ポイント劣ります。
⑤ 2月1週は売り越しでした。2月2週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、③が強気材料で、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に1.3ポイント(日経平均に勘算すると360円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に3.2ポイント(日経平均に勘算する890円程度)割安です。
米国市場に対する日本市場の弱さは、この週に低下しました。 米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で 20.5 と上昇しました。 日経 VI は 週間で 16.2まで低下しました。米国市場はやや悲観的ですが、日本市場は楽観的であることを示唆しています。
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには"青信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は+5.5%で、200日移動平均線との乖離率は+1.6%でした。2つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは、25日線・200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQも、25日線・200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には”黄信号”で、中期的には”青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。日本市場は上昇レンドで、短期も上昇トレンドです。
為替市場を分析すると、2021年初頭から円安トレンドが続いていましたが、11月より円高方向へ転換しました。今週は132円台から129円台が想定されます。
今週、米国では、インフレ率、生産者物価、小売売上高、FRB高官によるいくつかの講演が注目されます。また、英国では消費者物価指数、小売売上高、労働統計が発表される予定です。その他、日本の第4四半期GDP成長率、インドのインフレ率も発表される予定です。
先週の日経平均は、想定レンジ内で推移しました。上値は想定ラインを160円ほど下回り、下値は想定ラインを520円ほど上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+2σ(現在28200円近辺)で、下値が25日線(現在26980円近辺)の間での動きが想定されます。
今週は、1月の米消費者物価指数が最も注目されますが、米長期金利とVIXは上昇傾向であり、日経平均には売り圧力がかかりやすい週となりそうです。
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