[市況]
9月7日、NYDowとNASDAQは大幅上昇しました。9月8日の日経平均先物は、前日比240円高で寄付くと、午前中は240円高から550円高と上昇幅を拡げ、午後は500円高から620円高と上昇幅を拡げて、結局、570円高で取引を終了しました。日経平均の終値は634円高の28065円で、出来高は12.08億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラスに転換しました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は弱まりました。
9月7日の米国市場では、足元の相場下落を受け、短期的に「売られすぎ」と見た買いが幅広い銘柄に入りました。長期金利が低下し、高PER銘柄の割高感が薄れたことや、原油先物相場が下落し、インフレ懸念がやや和らいだことも追い風となりました。NYDowは3日ぶりに反発し、NASDAQは8日ぶりに反発しました。
9月8日の日本市場では、前日の米株式市場が売られ過ぎの反動で上昇した流れが引き継がれ、目先の戻りを見込んだ買いが優勢となりました。米株価指数先物が上昇したことも支援材料となりました。また、SQ算出を控えて思惑的な買いが入ったことも、相場の押し上げ要因となりました。日経平均は大幅に反発し、およそ1週間半ぶりに2万8000円台を回復しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にありますが、9日線を上回りました。短期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は+3.8%とプラスに転換し、200日線との乖離率も+2.2%とプラスに転換しました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスとなり、中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の中に戻りました。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の中に戻りました。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドは赤信号から黄信号に変わりました。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+12.2ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が3420円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差も、+8.1ポイントと前日よりプラス幅を拡げ、日経平均が2270円ほど割高であることを示しています。
日経VIは20.06、VIXは24.64となりました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を上回っています。一方、VIXは不安心理がかなり高まっているとされる25を下回りました。日米市場のボラティリティーの差は縮小しましたが、NYDowと比較して、日経平均の強さは拡大しました。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.6、米国-2.8と日本が4.8ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.49ポイント(日経平均換算で22610円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP改定値は前期比年率0.6%減で、速報値の0.9%減から改善されました。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
8月のISM非製造業景況指数、8月のISM製造業景況指数、8月のシカゴ購買部協会景気指数、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数は市場予想を上回りました。一方、7月の製造業受注、7月の小売売上高、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の8月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比31.5万人増で、市場予想の30万人増をやや上回りました。また、失業率は3.7%で、先月の3.5%から悪化しました。雇用は、景気面ではやや弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
7月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の新築住宅販売件数数、7月の中古住宅販売件数、7月の新築住宅着工件数、8月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.6%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.5%利上げし、マイナス金利と量的緩和策を終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、9月2日 3.1581% → 9月5日 3.1448% → 9月6日 3.1678%と、ここ5年の最高値を更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年9月6日に記録した3.1678%がここ5年間の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.80、PBRが1.17となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.7%で、こちらは3か月前より4.3ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.0%となり、日経平均の割安幅は870円から610円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、-870円から-200円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.11ポイントから2.99ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には下降トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
9月8日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、ECB定例理事会およびラガルド総裁の会見などが注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを320円ほど上回り、下値は想定ラインを540円ほど上回りました。目先は、25日線+100円(現在28360円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ-100円(現在27670円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を下回りました。日経VIは、低下しましたが、不安心理の高まりを示す20をまだ上回っています。日経平均は200日線近辺でリバウンドしました。25日線を上回って上昇が続くかどうかが、次の注目点です。
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