[市況]
9月9日、NYDowとNASDAQは大幅上昇しました。9月12日の日経平均先物は、前日比250円高で寄付くと、午前中は400円高から210円高の間で上下し、午後は330円高から260円高の間でもみあって、結局、260円高で取引を終了しました。日経平均の終値は327円高の28542円で、出来高は9.26億株と比較的低水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
一方、空売り比率は、5日平均を下回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は、かなり弱まりました。
9月9日の米国市場では、FRBによる大幅利上げ観測の織り込みがある程度進み、長期金利の上昇も一服したことで、投資家心理の悪化にひとまず歯止めがかかり、8月中旬以降の下げがきつかったハイテク株や景気敏感株を中心に買いが優勢となりました。NYDowとNASDAQは3日続伸しました。
9月12日の日本市場では、前週末の米株高を受けて投資家心理が上向き、主力の値がさ株を中心に買いが優勢となりました。政府が新型コロナウイルス対策の名目で設定している入国者数の上限を撤廃する方針を示したことも、インバウンド関連銘柄への買いを誘いました。一方で、利益確定の売りや戻り待ちの売りも出やすく、朝方の買いが一巡したあとは伸び悩みました。日経平均は3日続伸しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線の上にあり、25日線を上回りました。短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
総合乖離率は+8.8%と前週末よりプラス幅を拡げ、200日線との乖離率も+4.0%と前週末よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にありますが、9日線を上回りました。
NYDowは、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表では雲の上に戻りました。NASDAQも、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表では雲の上に戻りました。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+11.3ポイントと前週末よりプラス幅を縮め、日経平均が3230円ほど割高であることを示しています。また、NYDowとの差は+8.1ポイントで、日経平均が2310円ほど割高であることを示しています。
日経VIは19.15、VIXは22.79となりました。日経VIは、不安心理の高まりを示す20を下回っています。また、VIXは、不安心理がかなり高まっているとされる25を下回り、低下傾向にあります。日米市場のボラティリティーの差は縮小し、NYDowと比較して、日経平均の強さは横ばいでした。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.5、米国-2.3と日本が5.2ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+3.5、米国が+4.9)は1.4ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より3.80ポイント(日経平均換算で27820円)割安となっています。
市場は現在、「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP改定値は前期比年率0.6%減で、速報値の0.9%減から改善されました。また、4~6月期の米企業の決算は、下方修正が目立ちました。
経済指標を見てみます。
8月のISM非製造業景況指数、8月のISM製造業景況指数、8月のシカゴ購買部協会景気指数、8月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の鉱工業生産指数は市場予想を上回りました。一方、7月の製造業受注、7月の小売売上高、7月の耐久財受注、8月のニューヨーク連銀製造業景況指数、7月の消費者物価指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが上がるという面では弱気気材料です。
米国の8月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比31.5万人増で、市場予想の30万人増をやや上回りました。また、失業率は3.7%で、先月の3.5%から悪化しました。雇用は、景気面ではやや弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
7月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を上回りました。一方、7月の新築住宅販売件数数、7月の中古住宅販売件数、7月の新築住宅着工件数、8月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。6月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.6%で、市場予想を下回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが落ち着くという面では強気材料です。
新型コロナウイルス騒動による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末まで利上げを継続すると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、7月に0.5%利上げし、マイナス金利と量的緩和策を終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続するなど、金融緩和策を維持しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、9月5日 3.1448% → 9月6日 3.1678% → 9月7日 3.1940%と、ここ5年の最高値を連日で更新しています。なお、2021年9月9日の0.1141%が直近の最低金利で、2022年9月7日に記録した3.1940%がここ5年間の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.98、PBRが1.18となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.1%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+4.4%で、こちらは3か月前より4.2ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.3%となり、日経平均の割安幅は600円から680円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-870円から-330円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、3.06ポイントから3.11ポイントに拡大しました。ドル円相場は前週末より円高ですが、きょうの日中は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、インフレ対策を目的としたFRBの政策変更により金融緩和は収束に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはゼロ金利政策を続けていますが、量的緩和政策は終了に向かいつつあります。
9月12日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、原油価格や長期金利の動向も株式市場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを130円ほど上回り、下値は想定ラインを540円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+100円(現在28870円近辺)が上値の目安に、25日線-100円(現在28180円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を下回りました。また、日経VIは、不安心理の高まりを示す20を下回っています。日経平均は25日線を上回り、売り圧力はかなり弱まっています。ここからは、2万9000円に向かう動きが期待できそうです。
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