[市況]
3月10日、NYDowとNASDAQは下落しました。3月11日の日経平均先物は、前日比330円安で寄付くと、午前中は230円安から740円安と下落幅を拡げ、午後は780円安から390円安と下落幅を縮めて、結局410円安で取引を終えました。日経平均の終値は527円安の25162円で、出来高は14.21億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
また、空売り比率は50%を超え、5日平均を上回りました。個別銘柄への信用の売り圧力は強まりましたが、SQに絡んで例外的に売りがかさんだ可能性もありそうです。
3月10日の米国市場では、2月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比7.9%上昇と1月の7.5%上昇から拡大し、市場予想の7.8%上昇も上回ったことから、インフレへの警戒感が改めて強まり、ハイテク株を中心とした幅広い銘柄に売りが膨らみました。ただ、週間の失業保険申請件数が前週比で増加したことを受け、積極的な金融引き締めに対する懸念がやや後退し、引けにかけては下げ渋る展開となりました。NYDowとNASDAQは反落しました。
3月11日の日本市場では、ウクライナ情勢やインフレへの警戒感を背景に前日の米株式相場が下落した流れが引き継がれ、運用リスク回避の売りが優勢となりました。日経平均は前日に1000円近く上昇しており、戻り待ちの売りも出やすい環境でした。また、香港や上海などアジアの株式相場が下落したことも投資家心理の重石となりました。日経平均は大幅に反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-25.7%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-11.3%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の下にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の下にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには赤信号が点灯しています。中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、-0.2ポイントとマイナスに転換し、日経平均が50円ほど割安であることを示しています。また、NYDowとの比較では、日経平均が6.0ポイント(日経平均換算で1510円)割安となっています。
日経VIは28.60、VIXは30.23と、日米市場のボラティリティーはやや下落しました。NYDowに対する日経平均の弱さは、前日より拡大しました。VIXは依然として30を上回っており、投資家の不安心理は最高レベルまで高まったままです。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-8.0、米国-3.2と日本が4.8ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より1.70ポイント(日経平均換算で6560円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP改定値は前期比年率7.0%増で、速報値の6.9%増から小幅に上方修正されました。また、10~12月期の米企業の決算は、好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
1月の製造業受注、2月のISM製造業景況指数、1月の耐久財受注、2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、1月の鉱工業生産指数、1月の小売売上高は上回り、2月の消費者物価指数は市場予想に一致しました。一方、2月のISM非製造業景況指数は市場予想、2月のシカゴ購買部協会景気指数、2月のミシガン大学消費者信頼感指数、2月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、2月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は7勝5負で、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面で弱気気材料です。
米国の2月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比67.8万人増で、市場予想の42.3万人増を大きく上回りました。また、失業率は3.8%で、先月の4.0%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げ時期が早まるという面で弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
1月の中古住宅販売仮契約指数、1月の新築住宅販売件数、1月の住宅着工件数、2月の住宅市場指数、12月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。一方、12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.6%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は1勝5負で、景気面では弱気材料ですが、利上げ時期が遅くなるという面で強気気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、3月7日 0.6428% → 3月8日 0.7030% → 3月9日 0.7450%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.19、PBRが1.13となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。一方、今期予想利益の伸率は+28.5%で、こちらは3か月前より6.5ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの下落と連動して下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.7%となり、日経平均の割安幅は360円から1010円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-1010円から-360円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.76ポイントから1.79ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に下降トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化していますが、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
3月11日の米国市場では、3月のミシガン大学消費者信頼感指数などが注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを400円ほど下回り、下値は想定ラインを270円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ(現在25700円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ+100円(現在24940円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を上回り、信用の売り圧力は強まりました。日本市場のボラティリティーはやや低下しましたが、投資家の不安心理は依然として最高レベルまで高まっています。きょうの日経平均の下げ幅の大きさは、SQの特殊要因によるものと考えられますが、どちらにせよ、ボラティリティーの低下が期待できない場合は、低迷が続きそうです。
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