[市況]
3月21日、NYDowとNASDAQは上昇しました。3月22日の日経平均先物は、前日比260円高で寄付くと、午前中は160円高から350円高と上昇幅を拡げ、午後は220円高から350円高の間でもみあって、結局340円高で取引を終えました。日経平均の終値は396円高の27224円で、出来高は15.33億株と高水準でした。
高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
また、空売り比率は、5日平均を6日連続で下回り、およそ3か月半ぶりの低水準となりました。個別銘柄への信用の売り圧力はさらに弱まりました。
3月21日の米国市場では、幅広い銘柄に売りが膨らみました。パウエルFRB議長が全米企業エコノミスト協会でおこなった講演で、年内のFOMCで大幅な利上げに踏み切る可能性を示唆したことから、インフレ抑制のために景気が犠牲になるとの警戒感が高まりました。ウクライナ情勢の先行き不透明感や、原油先物相場の急伸も重石となりました。NYDowは6営業日ぶりに反落し、NASDAQは5営業日ぶりに反落しました。一方、S&P500は下げ渋って終了しました。
3月22日の日本市場では、外国為替市場で円安ドル高が進んだことを受け、自動車関連や機械など輸出関連株が買われました。また、値がさのハイテク株が買われ、指数を押し上げました。年度末を意識した配当権利取り狙いの買いも入り、相場を支えました。もっとも、このところの戻りが急ピッチだったこともあり、戻り待ちの売りも出て、相場の上値を抑えました。日経平均は6日続伸し、終値で2万7000円台を回復しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は-1.0%と前週末よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-3.8%と前週末よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドには赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。
NYDowは、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。NASDAQも、200日線の下にありますが、9日線と25日線の上にあります。一目均衡表では雲の下にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドには赤信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、+2.4ポイントと前週末よりプラス幅を縮め、日経平均が650円ほど割高であることを示しています。一方、NYDowとの比較では、日経平均が2.5ポイント(日経平均換算で680円)割安となっています。
日経VIは24.40、VIXは25.53と、日米市場のボラティリティーは下落しました。NYDowに対する日経平均の弱さは、前週末より改善されました。投資家の不安心理は、依然として高いものの、低下傾向が続いています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.4、米国-3.7と日本が3.7ポイント割安ですが、OECDの2023年予想GDP伸び率の日米差(日本が+1.8、米国が+4.9)は3.1ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.54ポイント(日経平均換算で2100円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の10~12月期のGDP改定値は前期比年率7.0%増で、速報値の6.9%増から小幅に上方修正されました。また、10~12月期の米企業の決算は、好調な企業が目立ちます。
経済指標を見てみます。
3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、1月の製造業受注、2月のISM製造業景況指数、1月の耐久財受注、2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は上回りました。また、2月の鉱工業生産指数、2月の小売売上高、2月の消費者物価指数は市場予想と一致しました。一方、3月のニューヨーク連銀製造業景況指数、3月のミシガン大学消費者信頼感指数、2月のISM非製造業景況指数、2月のシカゴ購買部協会景気指数は市場予想を下回りました。経済指標は8勝4負で、景気面では強気材料ですが、利上げペースが早まるという面で弱気気材料です。
米国の2月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比67.8万人増で、市場予想の42.3万人増を大きく上回りました。また、失業率は3.8%で、先月の4.0%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、利上げペースが早まるという面で弱気気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
2月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、2月の中古住宅販売件数、3月の住宅市場指数、1月の中古住宅販売仮契約指数、1月の新築住宅販売件数は市場予想を下回りました。12月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+18.6%で、市場予想を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、利上げペースが遅くなるという面で強気気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは2022年末までに3回利上げすると予想されています。また、テーパリングの加速が決定しています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、量的緩和政策を実施していましたが、これを転換し、量的緩和縮小を加速することを決めました。7~9月にも終了見込みです。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しています。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、昨年3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、3月16日 0.9481% → 3月17日 0.9278% → 3月18日 0.9340%と上昇中であり、注意が必要です。なお、2021年9月9日の0.1141が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.20、PBRが1.22となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは9.2%となり、これは3か月前より0.1ポイント改善されています。一方、今期予想利益の伸率は+29.1%で、こちらは3か月前より5.8ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.5%で、日経平均は690円ほど割安となっています。プレミアム値は、ここ一週間、-1000円から-480円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.97ポイントから2.12ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的には下降トレンドです。日経平均も、短期的には上昇トレンドで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。中国最大の不動産企業である恒大集団の破綻が緊急課題となっており、金融システムへの影響に警戒が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化していますが、FRBの政策変更により金融緩和は収束方向に向かいつつあり、その影響で、長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続していますが、2021年12月の理事会で、新型コロナウイルス対応で実施している追加の債券購入を2022年3月で終了することを決定しました。
3月22日の米国市場では、ラガルドECB総裁の理事会後の発言のほか、アドビなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、ウクライナ情勢や原油・長期金利の動向なども株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを220円ほど上回り、下値は想定ラインを610円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ-200円(現在27660円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-100円(現在26960円近辺)が下値の目安になりそうです。
空売り比率は5日平均を6日連続で下回り、信用の売り圧力はさらに弱まりました。日米市場のボラティリティーは依然として高いものの、低下傾向にあります。日経平均は75日線(現在27480円近辺)に接近しました。これを抜けば、ボリンジャーバンド+2σ(現在27860円近辺)ラインが次の目安となりそうです。
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