[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場では、ジャクソンホール会議で講演したパウエル議長が緩和縮小の前倒しなどに言及しなかったことで改めて買い安心感が広がり、株価指数は上昇しました。
一方、中長期的には、過剰流動の副作用によるインフレ懸念、ファンドなどのディフォルトによる銀行の信用力不足と信用収縮懸念があります。また、中国の不動産バブル崩壊懸念と景気減速、貿易戦争などによる世界経済の減速懸念もあります。さらに、東アジア、中東、ウクライナの地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2022年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.26ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが22.3に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの12.9との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2021年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに1.26ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが15.4程度になるか、又は、日経平均が33000円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は5360円ほど割安です。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大と一段の円安
④OECDによる日本の2022年GDP予測値(現在+2.72%)の上方修正
⑤外人の買い越し
最近の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NYDowが25日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は9.1%となりました。3ヶ月前に比べて0.3ポイント改善しています。また、利益伸び率は+35.6%で3ヶ月前に比べて7.7ポイント改善しています。
③ 米国の長期金利が上昇し、日米間の金利差は1.26から1.29と拡大したものの、110円から109円の範囲でもみあいました。
④ OECDの日米の2022年の名目GDP伸び率予測が改定されて、日本が+2.72%で、米国は+6.01%と予想されていますので、この面では日本市場の方が3.29ポイント劣ります。
⑤ 8月第3週は売り越しで、8月第4週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が強気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に12.8ポイント(日経平均に勘算すると3540円程度)割安です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に10.0ポイント(日経平均に勘算する2760円程度)割安です。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-4.4%となり先週と比較してマイナス幅が縮小しました。200日移動平均線との乖離率は-2.1%で、マイナス幅が縮小しました。3つの要素がマイナスですので、中期トレンドは、"赤信号"が点灯しています。
日経平均は、9日線の上にあり、25日線の下にあります。短期トレンドは、"黄信号"が点灯しています。
米国市場ではNYDowは、200日線・25日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは、200日線・25日線・9日線の上にありま。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には”黄信号”で、中期的には”青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると米国の利上げ、長期金利の上昇、原油相場の上昇、米中貿易摩擦、北朝鮮の問題、などの懸念は後退しているものの、ハイ・イールド債市場の下落、信用収縮に伴う金融市場混乱、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇の気配があり、注意が必要です。2020年3月にも、短期金利が低下しているにも関わらずLIBOR金利は上昇したことから、金融不安再燃の可能性が意識されていました。
一方、好材料としては米国のゼロ金利政策と債券購入を含むFRBによる企業への直接的金融支援や2兆ドルの経済対策。日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と無制限の国債や0から12兆円のETF購入などの金融緩和措置に加え、日本政府によるリーマンショック時を超える経済対策や、EUによる92兆円のコロナ復興基金設立とECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の拡大表明などが揚げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。日本市場は中期下降トレンドで、短期はもみあいです。
為替市場を分析すると、2020年は、ゆるやかに円高方向に動いていましたが、2021年に入り、円安方向に反転しています。今週は109円台から110円台が想定されます。
今週、労働市場の回復が続いていることを示す米国の雇用統計に加え、世界各国の製造業およびサービス業のPMI調査、オーストラリア、インドなどの第2四半期GDPの発表に注目が集まっています。その他の重要なデータとしては、米国の製造業受注と建設支出、ユーロ圏のインフレ率と景況感、ドイツの小売売上高、日本の鉱工業生産と消費者信頼感などが挙げられます。
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