[市況]
8月3日、NYDowは下落し、NASDAQは上昇しました。8月4日の日経平均先物は、前日比10円高で寄り付くと、午前中は40円高から110円安の間で上下し、午後は20円高から70円安の間でもみあって、結局10円高で取引を終えました。日経平均の終値は57円安の27584円で、出来高は10.74億株と比較的高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
8月3日の米国市場では、長期金利の低下を受けて景気減速への警戒感が高まり、朝方は売りが先行しました。しかし、長期金利の下げが一服すると、次第に資本財や金融など景気敏感株を中心に買い優勢に転じました。また、前週以来さえない展開だった主力ハイテク株に押し目買いが入り、相場を支えました。6月の製造業受注が市場予想を上回ったことも好感されました。NYDowは3営業日ぶりに反発し、NASDAQは続伸しました。
8月4日の日本市場では、新型コロナウイルスの感染再拡大を背景とした世界景気減速懸念が投資家心理の重石となり、売りが優勢となりました。トヨタが決算発表後に売られたことも嫌気されました。一方で、好決算を発表した銘柄には買いが入り、相場の下値を支えました。中国の7月のPMIが上昇したとの報道を受けて上海や香港などアジア株が上昇したことも、一定の安心感につながったようです。日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は-6.6%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-1.1%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
一方、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にありますが、9日線を上回りました。
NYDowは、25日線と200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、25日線と200日線の上にあり、9日線を上回りました。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。中期トレンドにも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より0.7ポイント拡大して-11.4となり、中長期的には日経平均が3140円ほど割安であることを示しています。また、日経平均とNYDowとの比較では、日経平均が10.1ポイント(日経平均換算で2790円)割安となっています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.4、米国-3.3と日本が4.1ポイント割安ですが、OECDの2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)は3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.88ポイント(日経平均換算で3700円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率6.5%増で、市場予想を下回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、概ね好調です。
経済指標を見てみます。
6月の製造業受注、7月のシカゴ購買部協会景気指数、7月のミシガン大学消費者信頼感指数確報値、6月の小売売上高、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、7月のISM製造業景況指数、6月の耐久財受注、6月の鉱工業生産指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月のISM非製造業景況指数は市場予想を下回りました。経済指標は6勝5負で、景気面ではやや強気材料ですが、金融緩和が長引く公算が大きくなるという面ではやや弱気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比85.0万人増で、市場予想の70万人増を上回りました。一方、失業率は5.9%で、先月の5.8%から悪化しました。雇用は、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小につながりかねないという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の新築住宅販売件数、6月の中古住宅販売件数、7月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+17.0%で、市場予想の+16.4%を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、金融緩和が長引く公算が大きくなるという面では強気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、7月28日 0.1285 → 7月30日 0.1177 →8月2日 0.1237と上昇は一服していますが、注意が必要です。なお、2021年6月14日の0.1180が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.5、PBRが1.20なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より2.2ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+29.7%で、こちらは3か月前より4.0ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.6%となり、日経平均の割安幅は310円から440円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-950円から-310円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.18ポイントから1.18ポイントと横ばいでした。ドル円相場はもみあいました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。国有企業や地方政府の不良債権問題の深刻化も経済成長の足かせとなりつつあり、注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続しています。
8月4日の米国市場では、7月のADP全米雇用リポートや、7月のISM非製造業景況指数のほか、GM、クラフト・ハインツ、ウェスタン・デジタルなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、仮想通貨の値動きや長期金利の動向も株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを180円ほど下回り、下値は想定ラインを60円ほど上回りました。目先は、25日線-300円(現在27820円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ-200円(現在27430円近辺)が下値の目安になりそうです。
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