8月14日、NYDowは上昇し、NASDAQは下落しました。8月17日の日経平均先物は、前日比160円安で寄り付くと、午前中は50円安から210円安の間でもみあい、午後は230円安から130円安の間でもみあって、結局200円安で取引を終えました。日経平均の終値は192円安の23096円で、出来高は8.19億株と低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
8月14日の米国市場では、7月の鉱工業生産指数が市場予想を上回ったことから、経済の底堅さが意識され、資本財に買いが集まりました。一方で、大型ハイテク株に利益確定の売りが出て、相場の重石となりました。7月の小売売上高は市場予想を下回りましたが、相場への影響は限定的でした。NYDowは小幅に反発し、NASDAQは3日ぶりに反落しました。
8月17日の日本市場では、4月~6月期のGDP速報値が前期比年率27.5%減と戦後最大の落ち込みを記録したことから、景気の先行きに対する懸念が高まり、売りが優勢となりました。日経平均は前週に900円超上昇しており、高値警戒感から売りが出やすい地合いでもありました。一方で、米株価指数先物やアジアの株式市場が堅調に推移したことが支えとなり、相場の下値は限定的でした。
日経平均は、9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は+12.4%と前週末よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+5.0%と前週末よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドにも青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドにも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より0.4ポイント拡大して-15.1となり、中長期的には日経平均がNASDAQより3490円ほど割安であることを示しています。また、日経平均とNYDowとの比較では、日経平均が1.4ポイント(日経平均換算で320円)割安となっています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差(1.4ポイント)とOECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より1.00ポイント(日経平均換算で4140円)ほど割高となっています。
イールドスプレッドの日米差(1.4ポイント)とOECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より1.00ポイント(日経平均換算で4140円)ほど割高となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率32.9%減で、市場予想の35.0%減ほどには悪化しませんでしたが、過去最大の落ち込みでした。一方、4~6月期の米企業の決算は、景気に敏感とされる企業の落ち込みは激しいものの、ハイテク株が好調で、全体としては市場の想定ほど悪化していません。
経済指標を見てみます。
7月の鉱工業生産指数、8月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のISM非製造業景況指数、6月の製造業受注、7月のISM製造業景況指数、7月のシカゴ購買部協会景気指数、6月の耐久財受注、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、7月の小売売上高、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は9勝2負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の7月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比176万人増で、市場予想の148万人増を上回りました。また、失業率は10.2%で、先月の11.1%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の新築住宅販売件数、6月の中古住宅販売件数、7月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、6月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+3.7%で、市場予想の+4.0%を下回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られました。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2022年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2021年6月までに1兆3500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ4か月は低下しています。直近では、8月12日 0.26475 → 8月13日 0.2801 → 8月14日 0.2703と落ち着きつつあり、これはFRBがジャンク債買い取りを含む大規模な金融緩和を表明したことの効果と思われます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが21.9、PBRが1.09となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは5.0%となり、これは3か月前より2.3ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は-17.6%で、こちらは3か月前より46.9ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-2.0%となり、日経平均の割安幅は320円から460円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-740円から-320円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は0.67ポイントから0.66ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均も、短期的・中期的に上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、引き続き国有企業や中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドルで円高が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。ECBはマイナス金利政策を継続しており、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、量的緩和を拡大しました。また、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。
8月17日の米国市場では、8月のニューヨーク連銀製造業景気指数や、8月の住宅市場指数などが注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大への対応や、米中対立に関する報道なども株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを300円ほど下回り、下値は想定ラインを90円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+2σ(現在23310円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-200円(現在22780円近辺)が下値の目安になりそうです。
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