7月31日、NYDowとNASDAQは上昇しました。8月3日の日経平均先物は、前日比210円高で寄り付くと、午前中は140円高から420円高と上昇幅を拡げ、午後は440円高から330円高の間でもみあって、結局330円高で取引を終えました。日経平均の終値は485円高の22195円で、出来高は13.23億株と比較的高水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
7月31日の米国市場では、7月のミシガン大学消費者信頼感指数が市場予想を下回ったことや、与野党対立で争点となっている失業給付の増額分が7月末で期限切れとなることなどが投資家心理の重石となり、売りが優勢となる場面が続きましたが、市場予想を上回る4~6月期決算を発表したアップルが取引終了にかけて一段高となり、株価指数を支えました。NYDowは反発し、NASDAQは3日続伸しました。
8月3日の日本市場では、米IT大手の好決算を背景に前週末の米株式相場が上昇した流れが引き継がれ、買いが優勢となりました。日経平均は前週末に大幅に下落していたため、値ごろ感からの買いが入った面もありました。外国為替市場で円相場が円安ドル高方向に推移したことも好感されました。日経平均は7営業日ぶりに大幅反発しました。
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は+2.9%とプラスに転換し、200日線との乖離率も+1.1%とプラスに転換しました。一目均衡表では雲の上に戻りました。3つの要素すべてがプラスとなり、中期トレンドは黄信号から青信号に変わりました。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より0.6ポイント縮小して-17.8となり、中長期的には日経平均がNASDAQより3950円ほど割安であることを示しています。一方、日経平均とNYDowの比較では、日経平均のほうが0.4ポイント(日経平均換算で90円)割高となっています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差(2.0ポイント)とOECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より0.34ポイント(日経平均換算で1320円)ほど割高となっています。
イールドスプレッドの日米差(2.0ポイント)とOECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より0.34ポイント(日経平均換算で1320円)ほど割高となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率32.9%減で、市場予想の35.0%減ほどには悪化しませんでしたが、過去最大の落ち込みでした。4~6月期の米企業の決算も、悪化しています。
経済指標を見てみます。
7月のシカゴ購買部協会景気指数、6月の耐久財受注、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月の小売売上高、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数、6月の鉱工業生産指数、6月のISM製造業景況指数、6月のISM非製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、7月のミシガン大学消費者信頼感指数、7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月の製造業受注は市場予想を下回りました。経済指標は8勝3負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比480万人増で、市場予想の290万人増を上回りました。また、失業率は11.1%で、先月の13.3%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の新築住宅販売件数、6月の中古住宅販売件数、7月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、6月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+3.7%で、市場予想の+4.0%を下回りました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られました。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2022年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2021年6月までに1兆3500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ3か月は低下しています。直近では、7月29日 0.2606 → 7月30日 0.2510 → 7月31日 0.2487と落ち着きつつあり、これはFRBがジャンク債買い取りを含む大規模な金融緩和を表明したことの効果と思われます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが18.3、PBRが1.05となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは5.8%となり、これは3か月前より0.2ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は-6.7%で、こちらは3か月前より21.1ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-1.3%となり、日経平均の割安幅は230円から300円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-300円から+100円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、0.52ポイントから0.52ポイントと横ばいでしたが、ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、引き続き国有企業や中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドルで円高が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。ECBはマイナス金利政策を継続しており、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、量的緩和を拡大しました。また、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。
8月3日の米国市場では、7月のISM製造業景気指数のほか、タイソン・フーズやAIGなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大への対応や、米中対立に関する報道なども株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲を上ぶれしました。上値は想定ラインを130円ほど上回り、下値は想定ラインを320円ほど上回りました。目先は、25日線(現在22480円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ(現在21890円近辺)が下値の目安になりそうです。
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