7月1日、NYDowは下落し、NASDAQは上昇しました。7月2日の日経平均先物は、前日比90円高で寄り付くと、午前中は50円安から140円高の間で上下し、午後は160円高から40円安の間で上下して、結局90円高で取引を終えました。日経平均の終値は24円高の22145円で、出来高は13.57億株と比較的低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
7月1日の米国市場では、6月のISM製造業景気指数が市場予想を上回ったことや、ADP全米雇用リポートで5月の雇用者数が大幅に上方修正されたことなどを受け、米景気の回復が続いているとの見方が強まり、買いが先行しました。また、ファイザーのワクチン開発が順調に進んでいるとの報道も支えとなりました。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念は根強く、取引終了にかけては売りが膨らみました。NYDowは3日ぶりに反落し、NASDAQは3日続伸しました。
7月2日の日本市場では、米国景気回復への期待感から買いが先行しました。また、中国の景況感の上向きを背景に上海市場や香港市場が上昇したことが追い風となりました。しかし午後、「東京都で新型コロナウイルスの感染者が新たに100人以上確認された」と伝わると、利益確定の売りに押される展開となりました。日経平均は結局、小幅に反発しました。
日経平均は、9日線と25日線の下にあります。短期トレンドには赤信号が点灯しています。
総合乖離率は+8.7%と前日比横ばいで、200日線との乖離率は+1.3%と前日よりプラス幅を拡げました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、200日線の上にありますが、9日線と25日線の下にあります。
NYDowは、25日線と200日線の下にありますが、9日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには黄信号が点灯しています。中期トレンドにも黄信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より0.8ポイント拡大して-14.5となり、中長期的には日本市場が米国市場より3210円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差(2.3ポイント)とOECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より0.17ポイント(日経平均換算で640円程度)割高となっています。
イールドスプレッドの日米差(2.3ポイント)とOECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(-2.4ポイント)を勘案すると、中長期的には日本市場は米国市場より0.17ポイント(日経平均換算で640円程度)割高となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP確報値は前期比年率5.0%減で、改定値の5.0%減から変わりませんでした。1~3月期の米企業の決算は、悪化しています。
経済指標を見てみます。
6月のISM製造業景況指数、6月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月の耐久財受注、6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月の小売売上高、6月のニューヨーク連銀製造業景況指数、4月の製造業受注、5月のISM非製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、6月のシカゴ購買部協会景気指数、5月の鉱工業生産指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は8勝3負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比250万9000人増で、市場予想の800万人減に反して増加しました。また、失業率は13.3%で、先月の14.7%から改善されました。雇用は、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
5月の中古住宅販売仮契約指数、5月の新築住宅販売件数、6月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、5月の中古住宅販売件数、5月の住宅着工件数は市場予想を下回りました。また、4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+4.0%で、市場予想の+4.0%と一致しました。住宅関連の指標は4勝2負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では、景気後退の前兆とされる長短金利の逆転状態も見られました。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2022年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2021年6月までに1兆3500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ3か月は低下しています。直近では、6月26日 0.3078 → 6月29日 0.2961 → 6月30日 0.3020と落ち着きつつあり、これはFRBがジャンク債買い取りを含む大規模な金融緩和を表明したことの効果と思われます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが17.9、PBRが1.05となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは5.9%となり、これは3か月前より1.5ポイント悪化しています。一方、今期予想利益の伸率は-3.1%で、こちらは3か月前より8.5ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが下落したにもかかわらず上昇しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.0%となり、日経平均とNYDowは均衡しました。プレミアム値は、ここ一週間、-170円から+570円の間で推移しています。
また、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場より割高で、テクニカル面では割安となっています。
日米の長期金利の差は、0.63ポイントから0.64ポイントに拡大しましたが、ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的にもみあいです。日経平均は、短期的には下降トレンドで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、引き続き国有企業や中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドルで円高が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。ECBはマイナス金利政策を継続しており、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、量的緩和を拡大しました。
7月2日の米国市場では、週間の新規失業保険申請件数や、6月の雇用統計、5月の製造業受注などが注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大への対応や、米中対立に関する報道なども株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを170円ほど下回り、下値は想定ラインを310円ほど上回りました。目先は、25日線(現在22430円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-1σ-200円(現在21860円近辺)が下値の目安になりそうです。
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