先週の米国市場では、中国の利下げと中東情勢の緊迫で売り買いが交錯しました。一方、中長期的には、米国政治の混乱、FRBの利上げ、欧州政治の混乱、欧州の銀行の信用力不足と信用収縮懸念、中国など新興国の景気減速、貿易戦争などによる世界経済の減速懸念や、中東、朝鮮半島やウクライナの地政学的リスクに引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2020年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が2.47ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが19.7に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの14.4との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2020年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに2.4%分拡がる(日本が下方修正又は米国が上方修正される)か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが22.2程度になる(今期業績が下方修正されるか、又は、日経平均が36670円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は13010円ほど割安です。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大と一段の円安、
④OECDによる日本の2021年GDP予測値(現在+0.74%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は住宅指標、四半期決算発表、12月のISM非製造業景気指数、12月の雇用統計などが注目されそうです。NYDowが25日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は4-6月期の決算発表に伴い、ROE予想値は8.1%で3ヶ月前に比べて0.7ポイント悪化しています。また、今期業績予想の利益伸び率は-6.8%で3ヶ月前に比べて7.4ポイント悪化しています。
③
米国の長期金利は低下して、日米の金利差は 1.90%から1.87%と縮小し、為替は109円台から107円台で円高方向の動きでした。
④
OECDの日米の2021年の実質GDP伸び率予測が発表されて、日本が+0.74%で、米国は+1.98%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.24ポイント劣ります。
⑤
12月4週と12月5週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。
5つのポイントのうち、①が強気材料でしたが③が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に2.7ポイント(日経平均に勘算すると640円程度)割安となっています。先週と比べ割安幅は拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は+11.9%となり先週と比較してプラス幅が縮小しました。200日移動平均線乖離率は+8.2%でプラス幅が縮小しました。3つの要素がプラスですので、中期トレンドは、"青信号"が点灯しています。
日経平均は、25日線の上に在りますが、9日線の下にあります。短期的トレンドには"黄信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線・25日線・9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqも200日線・25日線・9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には”青信号"で、中期的にも”青信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると米国の利上げ、米企業業績の伸び悩み、信用収縮に伴う金融市場混乱、北朝鮮の問題、原油相場の低迷、ハイイールド債市場の下落、世界的な長期金利低下傾向、などの懸念は後退しているものの、米中貿易摩擦、米国政治の不透明感、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、貿易戦争に伴う世界経済減速懸念、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
中国の不動産価格は大都市では横ばいですが設備過剰など中国全体の不良債権問題は解消していません。処理を急ぐと目先の市場下落を招き、先延ばしすると景気後退が長引く懸念があります。
また、直近のLIBOR金利は低下傾向ですが、ここ5年は上昇を続け、世界全体の不良債務が増加を続けていることを暗示しており、金融不安再燃の可能性が意識されています。
一方、好材料としては米国の利下げ期待、トランプ大統領の政策期待、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と80兆の国債・6兆円のETF購入などの金融緩和措置に加え、長期金利操作と金融緩和の継続期間明確化や、ECBによるマイナス金利の深堀と量的緩和の再開表明などが揚げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期も上昇トレンドです。日本市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。
先週の為替市場を分析すると、米国の長期金利は低下し、日米長期金利差は縮小して、為替は週間では円高でした。今週は106円台から108円台が想定されます。こからは、テクニカル指標、米国市場動向、為替の動き、外国人投資家動向を注目する必要があります。
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