6月10日、NYDowとNASDAQは上昇しました。6月11日の日経平均先物は、前日比40円安で寄り付くと、午前中は80円安から80円高と上昇に転じ、午後は80円高から30円高の間でもみあって、結局50円高で取引を終えました。日経平均の終値は69円高の21204円で、出来高は10.02億株と低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
6月10日の米国市場では、トランプ大統領が「メキシコからの輸入品への関税発動を見送る」と発表したことで、投資家心理が改善され、買いが優勢となりました。
6月11日の日本市場では、前日に日経平均が節目の2万1000円を回復したとあって利益確定の売りが先行しましたが、売りが一巡すると、円高の一服や米株価指数先物の上昇を好感した買いが優勢となりました。新規材料に乏しく、午後は膠着した相場となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は-2.9%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-2.3%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドには赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より0.7ポイント拡大して-6.7ポイントとなり、中長期的には日本市場が米国市場より1420円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2020年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.7ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて3.06ポイント(日経平均で12220円程度)割安であることを示しています。日本市場の割安感は日米の金利差と今期予想増益率差によるもので、長期的には大幅に割安です。
市場は現在、「英国のEU離脱やトランプ政権の通商政策の金融市場全体への影響」「中国の景気と世界経済や金・穀物・原油価格への影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や消費税増税の影響」「米国の景気、雇用状況、住宅市況」「中東やウクライナ情勢を巡る地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP改定値は前期比年率3.1%増で、速報値の3.2%から下方修正されました。1~3月期の米主要企業の決算は、貿易摩擦の影響を受けつつも、おおむね良好でした。
経済指標を見てみます。
5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注、5月のシカゴ購買部協会景気指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月のニューヨーク連銀製造業景気指数は市場予想を上回りました。一方、5月のISM製造業景況指数、4月の耐久財受注、4月の鉱工業生産指数、4月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は7勝4負で、景気面では強気材料ですが、利下げしにくくなるという面では弱気材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比7万5000人増で、市場予想の17万5000人増を大きく下回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げしやすくなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、4月の中古住宅販売仮契約指数、4月の新築住宅販売件数、4月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、3月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+2.7%で、市場予想の+2.5%を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では長短金利の逆転状態も見られ、これがどの程度続くかには注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは追加利上げを年内は見送る方針を示しています。ECBは政策金利の一段の引き下げに加え、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.2%まで拡大するとしています。ただ、国債の買い取りを含む量的緩和政策は、2018年末で終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、加えて2014年10月31日からはマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう調整するとし、さらにETFを従来の2倍の6兆円まで買い入れ、マイナス金利も継続、長期金利操作と金融緩和の継続期間を明確化する、などの金融緩和策を実施しています。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、2015年5月までの2年5か月は低下傾向にありましたが、その後は上昇に転じています。直近では、6月5日 2.4716% → 6月6日 2.4530% → 6月7日 2.4506%と推移しています。世界的な短期金利の低下にともない、上昇は一服していますが、米国債の3ヶ月物の2.26%を上回り、ギリシャ財政危機直前の2011年5月3日の0.346%や2012年1月5日につけたピークの0.5825%をも大きく上回っており、世界的に債務が大きく膨らんでいることを暗示しています。金融システム危機はいつ再燃してもおかしくない水準と言えます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.0、PBRが1.06となっています。1~3月期の決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+3.3%で、こちらは3か月前より7.2ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.4%で、日経平均はNYDowより90円の割安となっています。プレミアム値は、ここ一週間、-90円 から+90円の間で推移しています。
また、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場よりかなり割安で、テクニカル面でも割安となっています。
日米の長期金利の差は2.25ポイントから2.26ポイントに拡大しました。ドル円相場は小動きでした。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、ここ5年来の最高値を更新して上昇しており、金融システム危機への懸念があることを示しています。欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
上海銀行間取引金利は落ち着いていますが、今後も株価の急激な変化に注意が必要です。また、北京と上海の不動産価格は横ばいですが、引き続き国有企業・中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国の経済指標は好転しているものの、利上げには打ち止め感が出はじめました。目先の長期金利の上昇にはブレーキがかかっています。対ドルで円安が進みにくくなっています。
欧州市場でも景気回復の兆しが見られます。ECBはマイナス金利政策を継続していますが、量的緩和は2018年末に終了しました。EUの金融正常化へ向かう動きも中断しています。
6月11日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、貿易摩擦に関する報道も株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを50円ほど下回り、下値は想定ラインを80円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+100円(現在21460円近辺)が上値の目安に、25日線-100円(現在20970円近辺)が下値の目安になりそうです。
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6月10日、NYDowとNASDAQは上昇しました。6月11日の日経平均先物は、前日比40円安で寄り付くと、午前中は80円安から80円高と上昇に転じ、午後は80円高から30円高の間でもみあって、結局50円高で取引を終えました。日経平均の終値は69円高の21204円で、出来高は10.02億株と低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を拡げました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
6月10日の米国市場では、トランプ大統領が「メキシコからの輸入品への関税発動を見送る」と発表したことで、投資家心理が改善され、買いが優勢となりました。
6月11日の日本市場では、前日に日経平均が節目の2万1000円を回復したとあって利益確定の売りが先行しましたが、売りが一巡すると、円高の一服や米株価指数先物の上昇を好感した買いが優勢となりました。新規材料に乏しく、午後は膠着した相場となりました。
[テクニカル視点]
日経平均は9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
日経平均は9日線と25日線の上にあります。短期トレンドには青信号が点灯しています。
総合乖離率は-2.9%と前日よりマイナス幅を縮め、200日線との乖離率も-2.3%と前日よりマイナス幅を縮めました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドには赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、9日線・25日線・200日線の上にあります。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の中にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドには黄信号が点灯しています。
日米市場(日経平均とNASDAQ)の200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より0.7ポイント拡大して-6.7ポイントとなり、中長期的には日本市場が米国市場より1420円ほど割安であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2020年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.7ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて3.06ポイント(日経平均で12220円程度)割安であることを示しています。日本市場の割安感は日米の金利差と今期予想増益率差によるもので、長期的には大幅に割安です。
イールドスプレッドの日米差は、OECDの2020年予想実質GDP伸び率の日米差(-1.7ポイント)や金利差、予想PERを考慮すると、ファンダメンタル面では中長期的に日本市場が米国市場に比べて3.06ポイント(日経平均で12220円程度)割安であることを示しています。日本市場の割安感は日米の金利差と今期予想増益率差によるもので、長期的には大幅に割安です。
市場は現在、「英国のEU離脱やトランプ政権の通商政策の金融市場全体への影響」「中国の景気と世界経済や金・穀物・原油価格への影響」「アベノミクスによる日本経済のデフレ脱却の成否や消費税増税の影響」「米国の景気、雇用状況、住宅市況」「中東やウクライナ情勢を巡る地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の1~3月期のGDP改定値は前期比年率3.1%増で、速報値の3.2%から下方修正されました。1~3月期の米主要企業の決算は、貿易摩擦の影響を受けつつも、おおむね良好でした。
経済指標を見てみます。
5月のISM非製造業景況指数、4月の製造業受注、5月のシカゴ購買部協会景気指数、5月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、5月のミシガン大学消費者信頼感指数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、5月のニューヨーク連銀製造業景気指数は市場予想を上回りました。一方、5月のISM製造業景況指数、4月の耐久財受注、4月の鉱工業生産指数、4月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は7勝4負で、景気面では強気材料ですが、利下げしにくくなるという面では弱気材料です。
米国の5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比7万5000人増で、市場予想の17万5000人増を大きく下回りました。また、失業率は3.6%で、先月の3.6%から横ばいでした。雇用は、景気面では弱気材料ですが、利下げしやすくなるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
4月の住宅着工件数、5月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、4月の中古住宅販売仮契約指数、4月の新築住宅販売件数、4月の中古住宅販売件数は市場予想を下回りました。また、3月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+2.7%で、市場予想の+2.5%を上回りました。住宅関連の指標は3勝3負で、景気・金利の両面で中立材料です。
先進国の財政赤字が根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうですが、先進国は大規模な財政出動を容認する方向に舵を切りつつあります。にもかかわらず、景気後退リスクが意識されており、長期金利が下降傾向にあることは気がかりです。直近では長短金利の逆転状態も見られ、これがどの程度続くかには注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBは追加利上げを年内は見送る方針を示しています。ECBは政策金利の一段の引き下げに加え、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.2%まで拡大するとしています。ただ、国債の買い取りを含む量的緩和政策は、2018年末で終了しました。一方、日銀は、2%のインフレ目標を設定し、加えて2014年10月31日からはマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう調整するとし、さらにETFを従来の2倍の6兆円まで買い入れ、マイナス金利も継続、長期金利操作と金融緩和の継続期間を明確化する、などの金融緩和策を実施しています。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、2015年5月までの2年5か月は低下傾向にありましたが、その後は上昇に転じています。直近では、6月5日 2.4716% → 6月6日 2.4530% → 6月7日 2.4506%と推移しています。世界的な短期金利の低下にともない、上昇は一服していますが、米国債の3ヶ月物の2.26%を上回り、ギリシャ財政危機直前の2011年5月3日の0.346%や2012年1月5日につけたピークの0.5825%をも大きく上回っており、世界的に債務が大きく膨らんでいることを暗示しています。金融システム危機はいつ再燃してもおかしくない水準と言えます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが12.0、PBRが1.06となっています。1~3月期の決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より0.4ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は+3.3%で、こちらは3か月前より7.2ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowの上昇と連動して上げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-0.4%で、日経平均はNYDowより90円の割安となっています。プレミアム値は、ここ一週間、-90円 から+90円の間で推移しています。
また、中長期的に見ると、ファンダメンタル面では日本市場は米国市場よりかなり割安で、テクニカル面でも割安となっています。
日米の長期金利の差は2.25ポイントから2.26ポイントに拡大しました。ドル円相場は小動きでした。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的には上昇トレンドで、中期的にはもみあいです。日経平均は、短期的には上昇トレンドで、中期的には下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、ここ5年来の最高値を更新して上昇しており、金融システム危機への懸念があることを示しています。欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
上海銀行間取引金利は落ち着いていますが、今後も株価の急激な変化に注意が必要です。また、北京と上海の不動産価格は横ばいですが、引き続き国有企業・中国の地方政府を含めた不良債権問題に注意が必要です。
米国の経済指標は好転しているものの、利上げには打ち止め感が出はじめました。目先の長期金利の上昇にはブレーキがかかっています。対ドルで円安が進みにくくなっています。
欧州市場でも景気回復の兆しが見られます。ECBはマイナス金利政策を継続していますが、量的緩和は2018年末に終了しました。EUの金融正常化へ向かう動きも中断しています。
6月11日の米国市場では、重要な経済指標の発表は予定されていません。個別の材料が注目されるでしょう。引き続き、貿易摩擦に関する報道も株式相場に影響を与えそうです。
今日の日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを50円ほど下回り、下値は想定ラインを80円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ+100円(現在21460円近辺)が上値の目安に、25日線-100円(現在20970円近辺)が下値の目安になりそうです。
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