[ファンダメンタルの現状認識]
先週の米国市場は、IMFが世界経済の見通しを下方修正したことや、7-9月期の企業業績懸念で下落しました。一方、中長期的には、先進国の緊縮財政による消費や雇用の改善の遅れ、欧州の財政問題からの金融不安再燃による信用収縮懸念や中東の地政学的リスクが、今後も相場の足を引っ張る原因となる可能性が残されています。
2012年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、日本市場が2.05ポイント割安となりました。その要因はS&P500のPERが14.0で、東証1部平均の今期予想PERの11.5との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、今の日経平均の価格には日本の2012年から2013年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ2.1%分日本が減速する、又は、東証1部平均の今期予想PERが15.0程度となることが織り込まれているとも解釈できます。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大、
④日本の2011年GDP予測値(現在-0.9%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陰線となり、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、欧州の財政問題や、9月の小売売上高、9月の鉱工業生産、住宅関連指標などの経済指標と7-9月期の決算発表が株式相場に影響しそうですが、NYDowが一目均衡表の雲の上で推移出来るか否かに注目する必要があります。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は4-6月期の決算発表に伴い+62%と大幅な伸びとなっていまが。ROE予想値はこの3ヶ月で8.2%から7.8%へ伸び率が鈍化しています。
③
日米の長期金利は上昇して、日米の金利差は0.97%から0.89%と縮小し、為替は78円台から77円台でやや円高方向の動きでした。今週は78円台から79円台の動きが想定されます。
④
OECDによる日米の2012年の実質GDP伸び率は改定され日本が+2.0%で、米国は+2.4%と予想されていますので、この面では日本市場の方が劣ります。
⑤
10月1週は買い越しで10月2週は売り越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち①③が弱気材料でした。今週も、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、8.0ポイント割安となりました。先週比割安幅は変わりませんでした。弱い動きに変化なしとも解釈できます。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-13.3%となり先週と比較してマイナス幅が拡大しました。200日移動平均線乖離率は-5.6%となりマイナス幅が拡大しました。3つがマイナスですので中期トレンドは、”赤信号"が点灯しています。日経平均は25日線、9日線の下に在ります。短期的トレンドには"赤信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線の上に在りますが、25日線、9日線の下に在ります。一目均衡表の雲の中に在ります。中期的には"黄信号"で、短期的には”赤信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると、中東政情、新興国の利上、資源高、不動産市場の低迷、欧州の政府債務問題、などのリスクはやや後退しているものの雇用指標の停滞、世界景気後退懸念と7-9月の企業業績懸念が悪材料となっています。ただ、好材料としては、FRBによる金融緩和が2015年半ばまで継続する見通しの中、ECBによる無制限の国債購入とFRBによる無期限のMBSの購入表明が挙げられます。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみ合いで、短期は下降トレンドです。日本市場は中期下降トレンドで、短期も下降トレンドです。
目先の状況を分析すると、LIBORのドル3ヶ月物金利は下降傾向でEUの政府債務問題による金融危機懸念は後退しています。ただ、引き続き、スペインの地方政府や金融機関の不良債権問題やギリシャとの交渉の行方と各国の国債金利動向を見極める必要がありそうです。一方、先週の為替は米国長期金利が低下して、日米金利差が縮小し、為替はやや円高方向に動きました。
先週の日経平均の下値は想定したボリンジャー・バンド-1σを下回りました。今週の日経平均も米国市場や為替などを睨んだ動きとなりそうです。今週の日経平均は、上値が下降中の25日線(現在8890円近辺)で、下値は下降中のボリンジャー・バンド-2σ(現在8520円近辺)が想定されます。
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