[ファンダメンタル視点]
先週の米国市場では、欧州の利上げとFRBによる利上げ継続示唆で世界景気の後退が懸念され、株価指数は週間では下落しました。
週間変動率 NYダウ:-1.67% NASDAQ:-1.44% S&P500:-1.39%.
一方、中長期的なリスクとしてはウクライナ紛争の長期化懸念、エネルギー・コスト、金利上昇による金融不安と世界経済の減速懸念、不動産バブル崩壊と中国の景気減速懸念があります。また、このことから、スタグフレーションの到来も懸念されています。さらに、東アジア、中東の地政学的リスクにも引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、改定された2024年のOECDの名目GDP予想値を考慮すると、日本市場が4.54ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが19.8に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの15.1との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2022年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに4.54ポイント拡大するか(日本が下方修正又は米国が上方修正される)、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが47.5程度になるか、又は、日経平均が103,470円程度となると、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は70,690円ほど割安です。
ファンダメンタルからは、日本市場は米国市場に比べ、70,690円分魅力に欠けるとも言えます。先週、日本市場の弱さは、縮小しました。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇
②従来以上の今期の予想増益率のUP
③日米の金利差の拡大による一段の円安
④OECDによる日本の2023年GDP予測値(現在+3.5%)の上方修正
⑤外人の買い越し
先週の動きを見ると、
① 先週のNYDowの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQの週足は陰線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は、NYダウが25日線の上を維持できるか否かに注目したいと思います。
② 四半期決算の発表の結果、日経225採用銘柄のROE予想値は+9.0%となりました。3ヶ月前に比べて同水準です。また、利益伸び率は+1.7%で3ヶ月前に比べて+-1.0%ポイント悪化しています。
③ 米国の長期金利は低下したものの、日米間の金利差は3.36から3.38に拡大して、ドル円は141円から143円の範囲で円安方向に動きました。ドル・インデックスは週間で-0.56%下落しました。
④ OECDの日米の2024年の名目GDP伸び率は、日本が+2.96%で、米国は+3.40%と予想されていますので、この面では日本市場の方が0.44ポイント劣ります。
⑤ 6月2週は買い越しでした。6月3週は売り越しだった可能性が高く、今週は売り越しが予想されます。先週は、5つのポイントのうち、①が弱気材料でした。今週は、①②③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に0.1ポイント(日経平均に勘算すると30円程度)割高です。一方、NYDowとの200日線乖離率差では、中長期的に13.8ポイント(日経平均に勘算する4520円程度)割高です。
NYダウ対する日本市場の強さは、この週に縮小しました。米国市場のボラティリティーを示す指標である VIX は、週間で 13.4 まで低下しました。 日経 VI は 週間で 21.1と上昇しました。米国市場は楽観的で、日本市場はまだ過熱していることを示唆しています。
日経平均は、25日線の上にありますが、9日線の下にあります。短期トレンドには"黄信号”が点灯しています。
日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。日経平均の総合乖離率は+29.0%で、200日移動平均線との乖離率は+16.4%でした。3つの要素がプラスですので、中期トレンドには、"青信号"が点灯しています。
米国市場では、NYDowは、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。NASDAQも、25日線と200日線の上にありますが、9日線の下にあります。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には"黄信号”で、中期的には"青信号”が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済減速懸念は後退しているものの、ロシア・ウクライナ戦争によるインフレと金利上昇とEU圏のエネルギー不足と政治情勢悪化などによる景気後退、米中貿易摩擦、中国の不動産バブルの崩壊と信用収縮に伴う金融市場混乱、中東や東アジアの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
直近のLIBOR金利は上昇傾向で、引き続き金融不安再燃に注意が必要です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。日本市場は中期上昇トレンドで、短期はもみあいです。
為替市場を分析すると、2023年1月より円安方向へ転換しています。今週は143円台から141円台が想定されます。
今週の米国では、個人所得と個人消費、PCE価格指数及び銀行ストレステストの結果が注目されます。さらに、耐久財受注、GDP成長率の確報値、ミシガン大学消費者信頼感指数、仮契約住宅販売指数も注目される。さらに、パウエルFRB議長やラガルドECB総裁など、複数の中央銀行当局者がポルトガルで開催されるECB中央銀行フォーラムに出席します。その他では、ユーロ圏のインフレ率や中国の製造業・非製造業PMI、ドイツのIfo景気指数が注目されます。
先週の日経平均は、想定レンジ内で推移しました。上値は想定ラインを80円ほど下回り、下値は想定ラインを430円ほど上回りました。
今週の日経平均の想定範囲は、上値がボリンジャーバンド+1σ(現在33180円近辺)で、下値がボリンジャーバンド-1σ(現在31120円近辺)の間での動きが想定されます。
今週はPCE価格指数及び銀行ストレステストの結果などに影響される週となりそうです。ただ、米国市場はボラティリティーが低下しており、まだ楽観的です。日本市場は過熱感から調整が進みそうですが、深押しは無さそうです。
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