[市況]
7月29日、NYDowとNASDAQは上昇しました。7月30日の日経平均先物は、前日比130円安で寄り付くと、午前中は120円安から540円安と下落幅を拡げ、午後は370円安から560円安の間でもみあって、結局460円安で取引を終えました。日経平均の終値は498円安の27283円で、出来高は12.37億株と低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、マイナスに転換しました。個別銘柄に関しては、「売り」が有利の状態です。
7月29日の米国市場では、パウエルFRB議長がFOMC後の会見で量的緩和の縮小に慎重な姿勢を示したことから、株式市場に資金流入が続くとみた買いが優勢となりました。6月以降は売られがちだった景気敏感株が買い直され、株価指数を押し上げました。NYDowは3日ぶりに反発し、NASDAQは続伸しました。
7月30日の日本市場では、政府が緊急事態宣言の対象地域を追加する見通しとなったことから、経済活動の正常化が後退するとの懸念が高まり、売りが優勢となりました。米株価指数先物が下落したことや、香港ハンセン指数が大幅安となったことも投資家心理の重石となりました。日経平均は大幅に反落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の下にあり、9日線を下回りました。短期トレンド黄信号から赤信号に変わりました。
総合乖離率は-10.4%と前日よりマイナス幅を拡げ、200日線との乖離率も-1.9%と前日よりマイナス幅を拡げました。一目均衡表では雲の下にあります。3つの要素すべてがマイナスであり、中期トレンドにも赤信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の下にあり、9日線を下回りました。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドにも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前日より1.8ポイント拡大して-12.8となり、中長期的には日経平均が3490円ほど割安であることを示しています。また、日経平均とNYDowとの比較では、日経平均が11.1ポイント(日経平均換算で3030円)割安となっています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-7.5、米国-3.2と日本が4.3ポイント割安ですが、OECDの2021年予想GDP伸び率の日米差(日本が+2.72、米国が+6.01)は3.29ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.99ポイント(日経平均換算で4130円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「米中貿易摩擦」「バイデン政権の経済対策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の4~6月期のGDP速報値は前期比年率6.5%増で、市場予想を下回りました。また、4~6月期の米企業の決算は、概ね好調です。
経済指標を見てみます。
7月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、7月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場予想を上回りました。一方、6月の耐久財受注、7月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値、6月の鉱工業生産指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、6月のISM非製造業景況指数、5月の製造業受注、6月のISM製造業景況指数、6月のシカゴ購買部協会景気指数、5月の小売売上高は市場予想を下回りました。経済指標は2勝9負で、景気面では弱気材料ですが、金融緩和が長引く公算が大きくなるという面では強気材料です。
米国の6月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比85.0万人増で、市場予想の70万人増を上回りました。一方、失業率は5.9%で、先月の5.8%から悪化しました。雇用は、景気面では強気材料ですが、金融緩和の早期縮小につながりかねないという面では弱気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
6月の住宅着工件数は市場予想を上回りました。一方、6月の中古住宅販売仮契約指数、6月の新築住宅販売件数、6月の中古住宅販売件数、7月の住宅市場指数は市場予想を下回りました。5月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+17.0%で、市場予想の+16.4%を上回りました。住宅関連の指標は2勝4負で、景気面では弱気材料ですが、金融緩和が長引く公算が大きくなるという面では強気材料です。
新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退の影響で先進国の財政赤字はますます増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。長期金利は上昇傾向に変化しており、相場はこの動きに敏感になっているので注意が必要です。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2022年3月末までに1兆8500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続しています。加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大しました。ETFについては、TOPIXのみ0から12兆円まで買い入れると変更しています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を探る目安となるのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、ここ8か月は低下傾向にありますが、3月末と6月末には一時的に上昇しました。直近では、7月26日 0.13168 → 7月27日 0.1296 → 7月28日 0.1285と上昇は一服していますが、注意が必要です。なお、2021年6月14日の0.1180が直近の最低金利で、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが13.3、PBRが1.19なっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは8.9%となり、これは3か月前より2.9ポイント改善されています。また、今期予想利益の伸率は+29.8%で、こちらは3か月前より18.8ポイント改善されています。
[今後の見通し]
日経平均は、前日のNYDowが上昇したにもかかわらず下落しました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は-3.4%となり、日経平均の割安幅は500円から950円に拡大しました。プレミアム値は、ここ一週間、-950円から-500円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は、1.25ポイントから1.23ポイントに縮小しました。ドル円相場は円高方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均は、短期的・中期的に下降トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。国有企業や地方政府の不良債権問題の深刻化も経済成長の足かせとなりつつあり、注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうですが、銀行の資本規制緩和終了などの影響で、このところ長期金利は上昇傾向にあります。対ドルで円安が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、EU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。ECBはマイナス金利政策と金融緩和政策を継続しています。
7月30日の米国市場では、ユーロ圏の4~6月期GDPのほか、エクソンモービル、シェブロン、P&Gなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、仮想通貨の値動きや長期金利の動向も株式相場に影響を与えそうです。
きょうの日経平均は、想定範囲を下ぶれしました。上値は想定ラインを250円ほど下回り、下値は想定ラインを270円ほど下回りました。目先は、ボリンジャーバンド-1σ-100円(現在27650円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド-2σ(現在27210円近辺)が下値の目安になりそうです。
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