[市況]
12月4日、NYDowとNASDAQは上昇しました。12月7日の日経平均先物は、前日比100円高で寄り付くと、午前中は170円高から200円安と下落に転じ、午後は150円安から280円安の間でもみあって、結局210円安で取引を終えました。日経平均の終値は203円安の26547円で、出来高は11.66億株と比較的低水準でした。高値更新銘柄数と安値更新銘柄数との差は、プラス幅を縮めました。個別銘柄に関しては、「買い」が有利の状態です。
12月4日の米国市場では、景気敏感株を中心とした幅広い銘柄に買いが入りました。11月の雇用統計が市場予想を下回ったことから、追加の経済対策の必要性が増したとの見方が広がり、対策法案の早期成立期待が高まりました。主要3指数はそろって過去最高値を更新しました。
12月7日の日本市場では、前週末の米株高を受けて買いが先行しましたが、心理的な節目の2万7000円を前に高値警戒感が強まり、次第に利益確定の売りが優勢となりました。アジア株の下落も投資家心理を冷やしました。日経平均は続落しました。
[テクニカル視点]
日経平均は、25日線の上にありますが、9日線を下回りました。短期トレンドは青信号から黄信号に変わりました。
総合乖離率は+33.5%と前週末よりプラス幅を縮め、200日線との乖離率も+19.3%と前週末よりプラス幅を縮めました。一目均衡表では雲の上にあります。3つの要素すべてがプラスであり、中期トレンドには青信号が点灯しています。
また、ドルベースの日経平均(海外投資家からの見た目)は、25日線と200日線の上にありますが、9日線を下回りました。
NYDowは、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。NASDAQも、9日線・25日線・200日線の上にあります。一目均衡表では雲の上にあります。米国市場の短期トレンドには青信号が点灯しています。中期トレンドにも青信号が点灯しています。
日経平均とNASDAQの200日移動平均線と株価の乖離率の差は、前週末より1.6ポイント拡大して-3.4となり、中長期的には日経平均がNASDAQより900円ほど割安であることを示しています。一方、日経平均とNYDowとの比較は、日本市場が4.0ポイント(日経平均換算で1060円)割高であることを示しています。
[ファンダメンタルの現状認識]
イールドスプレッドは、日本-4.0、米国-2.9と日本が1.1ポイント割安ですが、OECDの2021年予想実質GDP伸び率の日米差(日本が+2.3、米国が+3.2)は0.9ポイント日本が下回っています。これらを勘案すると、ファンダメンタルでは、中長期的に日本市場は米国市場より0.26ポイント(日経平均換算で1830円)割安となっています。
市場は現在、「新型コロナウイルスの感染拡大」「中国景気が世界経済や金・穀物・原油価格に与える影響」「英国のEU離脱」「米中貿易摩擦」「トランプ政権の通商政策が金融市場全体に与える影響」「日本経済のデフレ脱却の成否や、消費税増税が景気に与える影響」「米国の景気・雇用状況・住宅市況」「中東やウクライナ情勢をめぐる地政学リスク」「為替の動向」といった事柄を材料視しているようです。
米国の7~9月期のGDP改定値は前期比年率33.1%減で、速報値と変わりませんでした。また、7~9月期の米企業の決算は、大方の予想に反して堅調な内容です。
経済指標を見てみます。
10月の製造業受注、11月のISM非製造業景況指数、10月の耐久財受注、11月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、10月の鉱工業生産指数は市場予想を上回りました。一方、11月のISM製造業景況指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数、11月のコンファレンスボード消費者信頼感指数、10月の小売売上高、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数、11月のミシガン大学消費者信頼感指数は市場予想を下回りました。経済指標は5勝6負で、景気面ではやや弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待できるという面ではやや強気材料です。
米国の11月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月比24万5000人増で、市場予想の45万人増を下回りました。一方、失業率は6.7%で、先月の6.9%から改善されました。雇用は、景気面では弱気材料ですが、さらなる金融緩和が期待できるという面では強気材料です。
米国の住宅関連の指標を見てみます。
10月の新築住宅販売件数、10月の中古住宅販売件数、10月の住宅着工件数、10月の住宅市場指数は市場予想を上回りました。一方、10月の中古住宅販売仮契約指数は市場予想を下回りました。9月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前年同月比+6.6%で、市場予想の+5.1%を上回りました。住宅関連の指標は5勝1負で、景気面では強気材料ですが、さらなる金融緩和が期待しにくいという面では弱気材料です。
新型コロナウイルスの蔓延による景気後退の影響で先進国の財政赤字は益々増加しており、これが根本的に解決されるにはかなり時間がかかりそうです。にもかかわらず、長期金利の下降傾向が今後も続きそうなことは気がかりです。
欧米日の金融政策をまとめてみます。
FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで継続すると表明しました。また、米国債などを月1200億ドル買い入れ、購入ペースを維持するとしています。ECBは、民間銀行が中央銀行に預け入れる際のマイナス金利を-0.5%とし、国債の買い取りを含む量的緩和政策を「2021年6月までに1兆3500億ユーロ」に拡大しました。日銀は、2%のインフレ目標を設定し、マイナス金利を継続していますが、加えて、国債の買い取り上限を80兆円から無制限に拡大し、ETFを従来の6兆円の2倍の12兆円まで買い入れるとしています。さらに、企業の資金繰り支援として、社債やCPなどの買い取り枠を20兆円まで拡大しました。
金融不安の気配を知るのに役立つのが、金融機関間の取引金利の推移です。代表的な指標であるLIBORドル3か月物金利は、3月に急上昇しましたが、ここ8か月は低下しています。直近では、12月1日 0.2320 → 12月2日 0.2305 → 12月3日 0.2253と落ち着いており、金融不安の気配は見られません。これは、FRBがジャンク債買い取りを含む大規模な金融緩和を継続していることや、大規模な財政出動の効果と思われます。なお、2018年12月20日に記録した2.8237%が、ここ5年の最高金利です。
一方、日経平均採用銘柄全体では、今期予想PERが24.7、PBRが1.17となっています。直近の四半期決算発表に伴い、企業の今期収益力の見通しである予想ROEは4.7%となり、これは3か月前より0.3ポイント悪化しています。また、今期予想利益の伸率は-20.8%で、こちらは3か月前より3.0ポイント悪化しています。
[今後の見通し]
日経平均は、前週末のNYDowが上昇したにもかかわらず下げました。結果、NYDowに対する日経平均の短期的なプレミアム(ドルベース・為替考慮後)は+0.5%となり、日経平均の割高幅は580円から120円に縮小しました。プレミアム値は、ここ一週間、+120円から+910円の間で推移しています。
日米の長期金利の差は0.90ポイントから0.93ポイントに拡大しました。ドル円相場は円安方向に推移しました。
テクニカル面を見ると、米国市場は短期的・中期的に上昇トレンドです。日経平均は、短期的にはもみあいで、中期的には上昇トレンドです。
ファンダメンタル面も見てみましょう。
LIBOR銀行間金利は、市中金利より高い状態が続いており、金融システムへの懸念があることを示しています。ドイツ銀行をはじめとする欧州の金融機関の健全性が疑問視されています。
中国では、不動産価格の下落が続いています。国有企業や地方政府の不良債権問題の深刻化も経済成長の足かせになりつつあり、注意が必要です。
米国では、金融緩和措置が長期化しそうです。長期金利も低い状態が続いており、対ドル安が進みやすい状況です。
欧州経済は悪化しています。ECBはマイナス金利政策を継続しており、また、新型コロナウイルスの感染拡大による景気減速に対応するため、量的緩和を拡大しました。さらにEU首脳会議は、およそ92兆円規模の復興基金の設立で合意しました。
12月7日の米国市場では、10月の消費者信用残高のほか、トール・ブラザーズなどの四半期決算が注目されるでしょう。引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大への対応や、米中対立に関する報道なども株式相場に影響を与えそうです。
12月7日の日経平均は、想定範囲内で推移しました。上値は想定ラインを80円ほど下回り、下値は想定ラインを30円ほど上回りました。目先は、ボリンジャーバンド+1σ(現在26680円近辺)が上値の目安に、ボリンジャーバンド+1σ-400円(現在26280円近辺)が下値の目安になりそうです。
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