先週の米国市場では、長期金利とVIX指数の落ち着きが投資家心理を改善させ、買いが優勢となりました。一方、中長期的には、米国政治の混乱、FRBの利上げ、ドイツ銀行始め欧州の銀行の信用力不足と信用収縮懸念、中国など新興国の景気減速、原油相場低迷などによる世界経済の減速懸念や、中東やウクライナの地政学的リスクに引き続き注意が必要です。
日米市場のイールド・スプレッドの差は、発表された2019年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が3.61ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが17.5に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.0との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。
これは、現在の日経平均の価格に対して、2019年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに3.7%分拡がる(日本が下方修正又は米国が上方修正される)か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが24.5程度になる(今期業績が下方修正されるか、又は、日経平均が41280円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は19390円ほど割安です。
[日経平均上昇の条件]
今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。
①米国市場の上昇、
②従来以上の今期の予想増益率のUP、
③日米の金利差の拡大と一段の円安、
④OECDによる日本の2019年GDP予測値(現在+0.96%)の上方修正、
⑤外人の買い越し、
最近の動きを見ると、
①
先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の中に在ります。NASDAQの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は住宅指標、四半期決算発表、1月の耐久財受注、2月のISM製造業景況指数が注目されそうです。NYDowが25日線の上の戻れるか否かに注目したいと思います。
②
日経225採用銘柄の今期予想増益率は10-12月期の決算発表に伴い、ROE予想値は9.5%で3ヶ月前に比べて0.7ポイント改善しています。また、今期業績予想の伸び率は+21.1%で3ヶ月前に比べて9.3ポイント改善しています。
③
米国の長期金利は上昇して、日米の金利差は2.82から2.83%と拡大し、為替は105円台から107円台で円安方向の動きでした。今週は105円台から107円台が想定されます。
④
OECDの日米の2019年の実質GDP伸び率予測が公開されて、日本が+1.0%で、米国は+2.1%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.1ポイント劣ります。
⑤
2月2週は売り越しで、2月3週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。
5つのポイントのうち、①が強気材料でした。今週は、①③⑤が影響すると思われます。
[テクニカル視点]
日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に7.2ポイント(日経平均に勘算すると1580円程度)割安となっています。先週比割安幅が拡大しました。
日経平均は、一目均衡表の雲の下に在ります。総合乖離率は-3.2%となり先週と比較してマイナス幅は縮小しました。200日移動平均線乖離率は+3.6%となりプラス幅は拡大しました。2つの要素がマイナスですので中期トレンドは、"黄信号"が点灯しています。
日経平均は、25日線の下に在りますが、9日線の上にあります。短期的トレンドにも"黄信号"が点灯しています。
米国市場ではNY Dowは200日線、9日線の上に在りますが、25日線の下に在ります。一目均衡表の雲の中に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。
短期的には”黄信号"で、中期的にも”黄信号"が点灯しています。
[今週の見通し]
米国市場をファンダメンタル面で見ると米企業業績の伸び悩み、米国の景気減速、原油相場の低迷、英国のEU離脱に伴う金融市場混乱、世界的な長期金利低下傾向、などの懸念は後退しているものの、米国の利上げ、ハイイールド債市場の下落、米国政治の不透明感、北朝鮮の情勢、EU圏の銀行の信用力不足と政治情勢、中国など新興国の景気減速に伴う世界経済減速懸念、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。
中国の不動産価格は大都市では横ばいですが設備過剰など中国全体の不良債権問題は解消していません。処理を急ぐと目先の市場下落を招き、先延ばしすると景気後退が長引く懸念があります。
また、直近のLIBOR金利がここ5年来の高値を更新し続けており、世界全体の不良債務が増加を続けていることを暗示しており、金融不安再燃の可能性が意識されています。
一方、好材料としては米国の緩やかな利上げペースの可能性、トランプ新大統領の政策期待、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と80兆の国債・6兆円のETF購入などの金融緩和措置に加え、長期金利操作と金融緩和の継続期間明確化や、ECBによる政策金利はマイナス金利と国債買い入れが維持されています。ただ、国債買い入れ枠は2017年4月から段階的に減額されています。EUも金融正常化へ向かう方向です。
テクニカルな面を見ると、米国市場は中期もみあいで、短期はもみ合いです。日本市場は中期もみ合いで、短期ももみ合いです。
先週の為替市場を分析すると、米国の長期金利は上昇し、日米長期金利差は拡大したものの、為替は週間では円安方向の動きでした。こからは、テクニカル指標、米国市場動向、為替の動き、外国人投資家動向を注目する必要があります。
先週の日経平均は、想定レンジ内の動きでした。上値は想定ラインを600円ほど下回り、下値は想定ラインを990円ほど上回りました。今週の日経平均は、上値が25日線(現在22570円近辺)で、下値はボリンジャーバンド-1σ(現在21580円近辺)の間での動きが想定されます。
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