日経平均の予想: [2016/08/07]今週の日経平均の見通し

[ファンダメンタルの現状認識]

先週の米国市場では、7月の雇用統計で雇用者数が市場予想を大幅に上回って増加したことでNYDowは上昇しました。一方、中長期的には、ドイツ銀行始め欧州の銀行の信用力不足、中国など新興国の景気減速、FRBの利上げ、原油相場低迷などによる世界経済の減速懸念と信用収縮懸念や、中東やウクライナの地政学的リスクに引き続き注意が必要です。

2017年の実質GDP伸率考慮後の日米市場のイールド・スプレッドの差は、2017年のOECDの実質GDP予想値を考慮すると、日本市場が1.91ポイント割安となっています。割安の要因はS&P500のPERが18.7に対して、日経平均採用銘柄の今期予想PERの13.5との差と日米金利差、GDP伸率差によるものです。これは、現在の日経平均の価格に対して、2017年の日米のGDP伸び率差がOECD予想値に比べ、さらに2.0%分拡がる（日本が下方修正又は米国が上方修正される）か、又は、日経平均採用銘柄の今期予想PERが18.2程度になる(今期業績が下方修正されるか、又は、日経平均が21900円程度となる)と、日米市場が均衡すると解釈できますので、中長期的に日本市場は5650円ほど割安です。

[日経平均上昇の条件]

今後、日経平均がさらに上昇する為には次の前提条件が必要と思われます。

①米国市場の上昇、

②従来以上の今期の予想増益率のUP、

③日米の金利差の拡大と一段の円安、

④OECDによる日本の2017年GDP予測値（現在+0.4%）の上方修正、

⑤外人の買い越し、

最近の動きを見ると、

① 先週のNYDowの週足は陽線となりました。日足は200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線の上に在り、一目均衡表の雲の上に在ります。今週は7月の小売売上高、8月のミシガン大学消費者信頼感指や4-6月期の四半期決算が注目されそうです。NYDowが史上最高値の更新が続くか否かに注目したいと思います。

② 日経225採用銘柄の今期予想増益率は4-6月期の決算発表に伴い前年比+5.3%前後の伸びとなっています。また、ROE予想値は8.3%で3ヶ月前に比べて0.9ポイント改善しています。決算の発表に伴い、今のところ今期業績予想は改善していますが、円高進行次第では減速が予想されます。

③ 米国の長期金利は低下して、日米の金利差は1.65から1.69%と拡大し、為替は102円台から100円台で円高方向の動きでした。今週は103円台から101円台が想定されます。

④ OECDの日米の2017年の実質GDPは、日本が+0.4%で、米国は+2.2%と予想されていますので、この面では日本市場の方が1.8ポイント劣ります。

⑤ 7月4週は買い越しで8月1週は買い越しだった可能性が高く、今週は買い越しが予想されます。

5つのポイントのうち①③が弱気材料でした。今週は、①③⑤が影響すると思われます。

[テクニカル視点]

日本市場をテクニカル面で見ると、NASDAQとの200日線乖離率差では、中長期的に12.3ポイント(日経平均に勘算すると2000円程度)割安となっています。先週比割安幅が1.5ポイント拡大しました。

日経平均は、一目均衡表の雲の上に在ります。総合乖離率は-6.1%となり先週と比較してマイナス転換しました。200日移動平均線乖離率は-5.7%となりマイナス幅が拡大しました。2つの要素がマイナスですので中期トレンドは、"黄信号"が点灯しています。日経平均は、25日線の上に在りますが、9日線の下に在ります。短期的トレンドは"黄信号"が点灯しています。

米国市場ではNY Dowは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。Nasdaqは200日線、25日線、9日線の上に在ります。一目均衡表の雲の上に在ります。短期的には”青信号"で、中期的にも”青信号"が点灯しています。

[今週の見通し]

米国市場をファンダメンタル面で見ると、米国の景気減速懸念、原油相場の低迷、信用不安懸念、ハイイールド債市場の下落懸念、米国の利上げ、英国のEU離脱に伴う金融市場混乱、などは後退しているものの、EU圏の銀行の信用力不足、世界的な長期金利低下傾向、中国など新興国の景気減速に伴う世界経済減速懸念、米企業業績の伸び悩み、中東やウクライナの地政学的リスクなどがリスク要因として存在します。中国の不動産価格は大都市では上昇しているものの設備過剰など中国全体の不良債権問題は増しています。処理を急ぐと目先の市場下落を招き、先延ばしすると景気後退が長引く懸念があります。また、8月にLIBOR金利がここ5年来の高値を更新しており金融不安再燃の可能性が意識されています。一方、好材料としては米国の緩やかな利上げペースの可能性、日銀による2%のインフレターゲットの設定やマイナス金利導入と80兆の国債・6兆円のETF購入などの金融緩和措置、ECBによる政策金利のマイナス金利幅拡大と毎月800億ユーロの国債購入など異次元の金融緩和措置強化、中国など新興国の金利低下傾向が挙げられます。

テクニカルな面を見ると、米国市場は中期上昇トレンドで、短期はもみ合いです。日本市場は中期もみ合いで、短期ももみ合いです。

目先の日本市場の状況を分析すると、米国の長期金利は上昇して日米長期金利差は縮小し、為替は週間では円高方向の動きとなりました。こからも、米国市場動向、為替の動き、外国人投資家動向を注目する必要があります。